ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
要は画面を見つめたまま目を細め、ニタリと微笑むと口ぱくで「暗号ってやつかな」と呟いた。もちろん、その事に気づいたものは誰もいなかったが、誰しも心の中で思っていた。

――暗号みたいだな――と。

『送信完了』の文字が現れると、要はネットを終了させた。

「後は待つだけだな」

小さく呟いてから、椅子を回転させて三人を見るとにっこりと微笑んだ。

「ちょっと待っててね」

数分後、パソコンから――ピロリロ♪――と短い音が鳴った。
見ると、パソコンの隅に『メールが届きました』と表示が出ていた。

さっそくメールを開くと、ゆっくりと静止画像が出来上がっていった。
数分で完全に全貌が見えたその静止画は、カラーではなく白黒で、線のようなものが入っていて、お世辞にも綺麗な画像とは言えないものだった。

画像には人がたくさん映っていて、どうやら駅のようだ。

「ねえ、これってもしかして駅のホームの……監視カメラの映像じゃない?」

「エレスコレクート! あかねちゃん!」

「エレ……なに?」

訝しがって聞いたのは秋葉だった。要は楽しそうにそれに答える。

「キミは正解だ!って言ったのさ、秋葉!秋葉もちょっとは勉強しなよ~♪スペイン語」

「って、スペインかよ!」

秋葉のツッコミを要は「ハハハ」と軽く笑った。しかし秋葉のツッコミを大幅に無視したあかねが怖い顔ですごむ。

「――説明してくれる?」

「何をさ?」

キョトンとした顔で逆に聞き返した要に、あかねは顔をしかめた。

「『何を』じゃないでしょ!? この画像どうしたのよ!?」

「どうしたのって、このパソコンじゃ映像が見れないから画像にして送ってもらっただけだけど?」

「ちがくて! これって駅でしょ? 駅のホームでしょ!? しかも監視カメラの映像でしょう? なに、貴方は駅員さんに知り合いでもいるの? 大体あのサイトやたら怪しくない!?」

激しくまくしたてるあかねに要はそっけなく答える。

「まあ、細かいことは別に良いじゃん」

「良くない! ヘタしたら犯罪でしょうが!!」

「あ~かねぇ~、人には知られたくない事ってのが、あるでしょうがぁ」

怒鳴るあかねに要は呆れたように、面倒くさそうにため息をつきながら言った。探るように薄笑いを浮かべて続ける。

「あんたにだって、あるでしょう? ほら、あたしら以外に言えない……ねえ?」

脅されるような発言に、あかねはワナワナと下唇を軽く噛んで、顔を歪ませながら強く言い放つ。

「でも、私はアンタ達には隠し事なんてしてないわ!」

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