ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
――呉野の回想。

「どうしようです……。どうしようです!」

試験勉強で遅くまで教室に残っていたボクは、さあ帰ろうかと思った矢先、美術室にノートを忘れてきた事を思い出したです。

「どうしたの呉野? こんな遅くまで教室にいるなんて珍しいね」

「あっ! 榎木です!」

そこに、部活が終わったのか、榎木がやってきたんです。榎木は教室に鞄を置いてきてしまったので、取りに来たところだったです。

「あのさぁ、その語尾の「です」はいいかげん直したら?」

榎木は苦笑しながらそう言ったです。
でもボクは「それは出来ない相談です!」とキッパリ断わりました。

そしてボクは美術室にノートを忘れた事、勉強していて誰もいない教室にいたことを話したです。
その時はまだ夕方で、日が沈み始める頃だったです。

「じゃあ取りに行ってきたら良いじゃない」

「ダメです! 美術準備室は今恐い所になってるです! ドッペルです!」

「隣じゃない」

「でも恐いです」

「……じゃあ、一緒に行こうか?」

そう、榎木は優しく笑いかけてくれたです。

そして、美術室付近まで来ると、言い争う声が聞こえてきたです。
こっそり後ろ(美術準備室に近い扉)から覗くと、もみ合っている日吉と皆元の姿がありました。

「さっさと入れよ! ブス!」

「やめてよ! 押さないで、あっちゃん、やめて!」

「ふざけんな! あっちゃん何て呼ぶなつってんだろ!? キショイんだよ!」

そう怒鳴って、罵倒して、日吉は皆元を蹴り飛ばしたです。
そのままドアを閉めて、さらにホウキや椅子をドアの前に置いたです。

そして日吉が振り向いた時、ボクは日吉に顔を見られたです。
でも榎木は上手くひっこんでて見られなかったです。

日吉はそのままボクを睨みつけて、ボクにすごみました。

「このこと口外したらただじゃ済まないからね!」

その後、美術室の前の方の出口から走って出て行ったです。
ボクは振り返りもせずに走り去っていく、日吉の姿を見つめていたです。

その時、美術室の近くの、壁の影から三枝が出てきたんです。

あとで一人で確認してみたですが、あの位置からだと、声もバッチリ聞き取れますし、姿も少しは見えるです。

――回想終了。
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