ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
そう言って要はスッと立ち上がった。
それと同時に由希が何かに気づいたような表情をして、一目散にテープをくぐると、要の側にしゃがんだ。

すると草陰の中に手を伸ばし、何かを掴み出す。
慌てて後を追ってきたあかねと秋葉に向けて、拳を差し出すと、掌をゆっくりと開いた。

「……これ……」

その物体をよく見ようと、要達は由希の掌を覗き込んだ。

「何これ?」

第一声にあかねが呟くと、秋葉が意見を述べる。

「……お守り、じゃねぇか?」

「見えないけど?」

「いや、秋葉の言うとおりかもしれない」

要は言って、静かに物体を見つめた。

その物体は、赤黒く、いびつ歪な形をした3㎝程度の片手に治まる小さな物だった。
ふと、視線を由希に向けると、口元に手をやって具合が悪そうに見えた。

「由希、大丈夫?」

要が心配そうに由希の肩に手を乗せる。
向けられた由希の顔は蒼白で、今にも倒れそうだった。すると案の定、由希は嗚咽を漏らしながらしゃがみこんだ。

「うっ……!」

「ちょ! 大丈夫!?」

あかねと秋葉も由希の傍に寄る。

「ううっ!」

「ああ、どうしよう!」

「救急車呼ぶか!?」

あかねと秋葉がうろたえる中、苦しそうに口を押さえる由希に、要は密かに耳打ちした。

「トイレ行ってきな。――それと携帯貸して、あたしが連絡しとく」

一瞬驚いた表情の由希が要を見上げた。見上げられた要は、にこりと優しく微笑む。

「ごめん、ね……」

一言そう申し訳なさそうに告げると、由希はそっと気づかれないように要に携帯を手渡した。
そのまま立ち上がって、一直線にトイレに駆け込む。

その様子を心配そうに見つめるあかねと秋葉をよそに、要は神妙な面持ちで立ち上がり、静かに由希の携帯を片手にその場を離れた。

一方で、トイレに駆け込んだ由希は嗚咽を漏らしながら震えていた。

(もしかして……やっぱり、要ちゃん気づいてる――?)
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