ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
「あのこれ、どなたのかご存じないでしょうか?」
あかねが声をかけた少女は2人組だった。
「……知らないよね?」
「うん、見たことないね」
2人はそう言い合うと「じゃあ」と言ってその場を去った。
「ありがとうございました」
2人の背中にあかねはお礼を言うと「ふう」と一息つく。
あかねが担当したエリアは校内で、人が集まっている文化部の部室近くの廊下で聞いて回っていた。
さすがに部活中の部室にズシズシ入っていく勇気はなく、廊下で出てくる人を待っていたり、通った人に聞いたりしていた。
「こういう時、要ならズシズシ入って行っちゃうんだろうなぁ」
うらやましくもあり、恥ずかしくもあるな、とあかねは思う。
また「ふう」と息を吐いて、窓から外を眺めると、中庭で要が聞き込んでいる姿が見えた。
要は次から次に気楽に声をかけては「知らないなぁ」と言われていた。
時には、ベンチで本を読んでいる生徒の横に座って、本を読むのを邪魔しつつ、聞き込みをしていたり、時には「毒蜘蛛だ!」と逃げられたり、逃げた少女達を捕まえて楽しそうに、にやにや笑いながら聞き込みをしたりしていた。
「……なにやってんだか」
半ば呆れながら、あかねは苦笑した。
すると、そんなあかねに声をかけてきた人物がいた。
「沢松さんじゃない」
「え?」
振り向くと、そこにいたのは榎木だった。
「榎木先輩」
「こんなところでどうしたの? 生徒会とか、クラブとかは今日はおやすみ?」
「いえ……違うんですけど」
生徒会の仕事をはやく切り上げてきたので、後ろめたい気持ちであかねは苦笑する。
「先輩は、どうして文化部の部室に?」
「ああ、友達がいるのよ。なんだか、ご自宅で霊現象があるそうだから、ちょっと相談にのってから剣道部に行こうと思って」
「そうなんですか」
あかねが言うと、榎木は思いついたかのように「ああ、そうだ」と言って、微笑む。
「あなた達、また変な事やってるんですって? 何かを聞きまわってるって聞いたわよ。なんなの?」
「あ、いえ……それが……これなんですけど」
歯切れ悪く言って、あかねが携帯を取り出すと、榎木は覗き込むようにして写真を見つめた。
「……」
「ご存知ですか?」
「いいえ、見たこともないわ。なんなのこれ? お守り?」
「ええ、多分――」
また歯切れ悪くあかねが答えると、榎木は「あなた達も大変ね」と言って、手をふって茶道部の部室へ入っていく。その姿を見送るようにして、あかねは礼を言った。
「ありがとうございました」
あかねが声をかけた少女は2人組だった。
「……知らないよね?」
「うん、見たことないね」
2人はそう言い合うと「じゃあ」と言ってその場を去った。
「ありがとうございました」
2人の背中にあかねはお礼を言うと「ふう」と一息つく。
あかねが担当したエリアは校内で、人が集まっている文化部の部室近くの廊下で聞いて回っていた。
さすがに部活中の部室にズシズシ入っていく勇気はなく、廊下で出てくる人を待っていたり、通った人に聞いたりしていた。
「こういう時、要ならズシズシ入って行っちゃうんだろうなぁ」
うらやましくもあり、恥ずかしくもあるな、とあかねは思う。
また「ふう」と息を吐いて、窓から外を眺めると、中庭で要が聞き込んでいる姿が見えた。
要は次から次に気楽に声をかけては「知らないなぁ」と言われていた。
時には、ベンチで本を読んでいる生徒の横に座って、本を読むのを邪魔しつつ、聞き込みをしていたり、時には「毒蜘蛛だ!」と逃げられたり、逃げた少女達を捕まえて楽しそうに、にやにや笑いながら聞き込みをしたりしていた。
「……なにやってんだか」
半ば呆れながら、あかねは苦笑した。
すると、そんなあかねに声をかけてきた人物がいた。
「沢松さんじゃない」
「え?」
振り向くと、そこにいたのは榎木だった。
「榎木先輩」
「こんなところでどうしたの? 生徒会とか、クラブとかは今日はおやすみ?」
「いえ……違うんですけど」
生徒会の仕事をはやく切り上げてきたので、後ろめたい気持ちであかねは苦笑する。
「先輩は、どうして文化部の部室に?」
「ああ、友達がいるのよ。なんだか、ご自宅で霊現象があるそうだから、ちょっと相談にのってから剣道部に行こうと思って」
「そうなんですか」
あかねが言うと、榎木は思いついたかのように「ああ、そうだ」と言って、微笑む。
「あなた達、また変な事やってるんですって? 何かを聞きまわってるって聞いたわよ。なんなの?」
「あ、いえ……それが……これなんですけど」
歯切れ悪く言って、あかねが携帯を取り出すと、榎木は覗き込むようにして写真を見つめた。
「……」
「ご存知ですか?」
「いいえ、見たこともないわ。なんなのこれ? お守り?」
「ええ、多分――」
また歯切れ悪くあかねが答えると、榎木は「あなた達も大変ね」と言って、手をふって茶道部の部室へ入っていく。その姿を見送るようにして、あかねは礼を言った。
「ありがとうございました」