ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
――回想。

あたしが廊下を歩いていると、前方から日吉先輩がやってくるのが見えた。
気づいたのに声をかけないとまた面倒な事になるかな、と思ったあたしは声をかけてみたわけ。

「日吉先輩、こんにちは」

「……ああ、吉原さん。こんにちは」

挨拶を返した日吉先輩は何だか上機嫌に見えた。
だから、ちょっと質問してみようと思ってさ。
上機嫌中なら、答えやすいかなってさ。

「ちょっと先輩に聞きたい事があるんですけど、良いですかね?」

「……なに?」

一瞬ピリッとした気もしたけど、続けてみよう。

「この前、あたしの質問に答えませんでしたよね?」

「なんのこと?」

「美術準備室の、部屋の様子についてです」

「……ああ、そうだったかしら?」

日吉先輩は穏やかに答えて、腰に手を当てる。

「あの部屋は今と変わってなかったわ」

そう言ってニコリと日吉先輩は微笑んだ。

「もう良いかしら?」

「はい。失礼しました」

あたしのその返事を待って、彼女は歩きだした。

――回想終了
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