ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
「……ごめんなさい」
「……あたしが聞きたいのは、別に謝罪じゃないんだけどな」
優しく言う要に、美奈は押し黙った。また沈黙が続くのかと思われたが、直後に由希が「はあ」っと息を吐いた。
「……美奈はさ――」
「やめて!」
言いかけで、美奈が強く制止した。初めて美奈の大声を聞いた要は少しびっくりして目を丸くする。そんな要を見ずに、由希は美奈をじっと見つめた。そして静かに語りかける。
「美奈、もう要はきっと気づいてるよ」
「……」
「それでも要が自分から言わないのは、うちらに言って欲しいからじゃないの?」
「……」
「あの時、要が自分の秘密を暴露した時、ウチは嬉しかったし、同時に何だか申し訳なかった。美奈にも話したでしょ?美奈だって、心苦しいねって言ってたじゃん」
「……だけど」
「そんなに信用できないんだ?」
「違う!」
言って、美奈は押し黙る。そんな様子を見て、由希は深いため息をついた。
「違うって言うなら、言ってもいいのね?」
「……」
美奈は不安そうに顔をゆがめながら、小さく頷いた。
「美奈はね、要。生まれつきある能力があるんだ」
「……能力」
「うん。いわゆる――「霊感」ってやつ」
「――そう」
要はやっぱり、と優しく微笑む。
「やっぱり、気づいてたんだね要」
「薄うすだよ」
二人の何だか安堵した様子を感じ取った美奈は、戸惑いながら要を見詰めた。
「――美奈はね、小さい頃から死んだ人が見えてて、その人達に会うたびにあてられて体調を崩してたの。だから当然、学校にも中々いけなかった」
由希は伏し目がちに、床を見つめ、悲しそうに微笑む。その様子を見て、美奈は申し訳なさそうに俯いて、静かに頭まで布団をかぶった。
「――両親はね、何とか美奈の体質を良くしようとお払いに行ったり、零能講座とか訳分かんないとこ行ったりしたんだけど、結局良くならなくて、中学に入ってからは不登校になって、全然学校に行かなくなったの」
「ふう」と息を吐きながら由希が微笑うと、美奈が勇気を振り絞るようにして、話に入ってきた。
「……由希が――由希が、こ、このままじゃいけないって……! わ、わたしは、通信高校にすることに、決まってて、て、手続きも済んでたんだけど――このままじゃいけないって!」
美奈は一気に言って、いったん息を吐きだした。そして今度は落ち着いたのか、ゆっくりと話出した。
「由紀は、一人でここに引っ越して、白石女子学園に通うことが決まって、たんだけど、わたしも一緒においでって、それで、たまに入れ替わろうって。人にも、死んだ人にも慣れなくちゃいけないよって……。じゃなきゃ、美奈はずっと苦しいまんまだからって」
「……ウチも、両親もいつまでも一緒にいられるとは限らないから、せめて自分のことくらいは守れるようになってもらわなきゃって思ったのよ。外に出て、じょじょにでも免疫をつけられたらって、ね」
「美しい姉妹愛だねぇ」
要はほろりと感動し、心底思った。
(家(ウチ)とは大違い!)
「ま、それで、入れ替わるようになったってわけ。入学式を美奈に行かせたのはさ、すぐ終わるからちょうどいいと思って。人が多いとこにも美奈はなれてないけど、短時間なら大丈夫かなって思ったんだけど――」
「……ごめん」
「謝ることじゃないよ、姉ちゃんも初っ端から無理させたかなって思ってたんだ」
由希はそう優しく言ってほほ笑む。すると美奈が握っていた自分の手を解いて、布団をはがすと、勢いよく要の名を呼んだ。
「要ちゃん!」
不意なことに要は少し驚いて、軽く肩をびくっとさせた。
「お? え、はい」
曖昧な返事をすると、美奈は少し俯いて、自分の手を握り締める。そして、ぎゅっと噛んだ下唇を解いた。
「……あたしが聞きたいのは、別に謝罪じゃないんだけどな」
優しく言う要に、美奈は押し黙った。また沈黙が続くのかと思われたが、直後に由希が「はあ」っと息を吐いた。
「……美奈はさ――」
「やめて!」
言いかけで、美奈が強く制止した。初めて美奈の大声を聞いた要は少しびっくりして目を丸くする。そんな要を見ずに、由希は美奈をじっと見つめた。そして静かに語りかける。
「美奈、もう要はきっと気づいてるよ」
「……」
「それでも要が自分から言わないのは、うちらに言って欲しいからじゃないの?」
「……」
「あの時、要が自分の秘密を暴露した時、ウチは嬉しかったし、同時に何だか申し訳なかった。美奈にも話したでしょ?美奈だって、心苦しいねって言ってたじゃん」
「……だけど」
「そんなに信用できないんだ?」
「違う!」
言って、美奈は押し黙る。そんな様子を見て、由希は深いため息をついた。
「違うって言うなら、言ってもいいのね?」
「……」
美奈は不安そうに顔をゆがめながら、小さく頷いた。
「美奈はね、要。生まれつきある能力があるんだ」
「……能力」
「うん。いわゆる――「霊感」ってやつ」
「――そう」
要はやっぱり、と優しく微笑む。
「やっぱり、気づいてたんだね要」
「薄うすだよ」
二人の何だか安堵した様子を感じ取った美奈は、戸惑いながら要を見詰めた。
「――美奈はね、小さい頃から死んだ人が見えてて、その人達に会うたびにあてられて体調を崩してたの。だから当然、学校にも中々いけなかった」
由希は伏し目がちに、床を見つめ、悲しそうに微笑む。その様子を見て、美奈は申し訳なさそうに俯いて、静かに頭まで布団をかぶった。
「――両親はね、何とか美奈の体質を良くしようとお払いに行ったり、零能講座とか訳分かんないとこ行ったりしたんだけど、結局良くならなくて、中学に入ってからは不登校になって、全然学校に行かなくなったの」
「ふう」と息を吐きながら由希が微笑うと、美奈が勇気を振り絞るようにして、話に入ってきた。
「……由希が――由希が、こ、このままじゃいけないって……! わ、わたしは、通信高校にすることに、決まってて、て、手続きも済んでたんだけど――このままじゃいけないって!」
美奈は一気に言って、いったん息を吐きだした。そして今度は落ち着いたのか、ゆっくりと話出した。
「由紀は、一人でここに引っ越して、白石女子学園に通うことが決まって、たんだけど、わたしも一緒においでって、それで、たまに入れ替わろうって。人にも、死んだ人にも慣れなくちゃいけないよって……。じゃなきゃ、美奈はずっと苦しいまんまだからって」
「……ウチも、両親もいつまでも一緒にいられるとは限らないから、せめて自分のことくらいは守れるようになってもらわなきゃって思ったのよ。外に出て、じょじょにでも免疫をつけられたらって、ね」
「美しい姉妹愛だねぇ」
要はほろりと感動し、心底思った。
(家(ウチ)とは大違い!)
「ま、それで、入れ替わるようになったってわけ。入学式を美奈に行かせたのはさ、すぐ終わるからちょうどいいと思って。人が多いとこにも美奈はなれてないけど、短時間なら大丈夫かなって思ったんだけど――」
「……ごめん」
「謝ることじゃないよ、姉ちゃんも初っ端から無理させたかなって思ってたんだ」
由希はそう優しく言ってほほ笑む。すると美奈が握っていた自分の手を解いて、布団をはがすと、勢いよく要の名を呼んだ。
「要ちゃん!」
不意なことに要は少し驚いて、軽く肩をびくっとさせた。
「お? え、はい」
曖昧な返事をすると、美奈は少し俯いて、自分の手を握り締める。そして、ぎゅっと噛んだ下唇を解いた。