ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
――「じゃあ、解散!」

要が勢い良くそう言って、あかねと由希と秋葉は拳を上に上げた。

「お~う!」と秋葉だけが気合を入れたが、あかねと由希は小さく拳を上げて「はあ……」と小さくため息をついた。

そうして3人はお守りの調査をするために、散りじりに部室を出て行った。最後に残った要はにやりと微笑む。

そしてそのまま、部室を出た。
向かった先は中庭ではなく、3年の教室だった。人通りの少なくなった廊下から、ひょいと教室を覗いてみる。
その教室には3人の生徒が残っていた。その生徒達は窓際の席で何やら楽しそうに話していた。

「ふむ……」

要は顎に手を当ててしばらく何かを考える。

(確か……あのみつあみの女子は……)

教室の中にいる3人の内の一人はみつあみの少女だった。その子はおそらく自分の席であろう机の椅子に座って話していた。

要はもう一度、そのみつあみの子をちらりと見ると、スカートのポケットから小さな黒い手帳を取り出した。

その手帳の裏にはシルバーとキラキラ光るピンクパールで、蜘蛛の糸にかかっている蝶が綺麗に描かれていた。
その手帳をぺらぺらとめくると、あるページで指が止まった。

「ほう、やっぱりね」

そう独りごちて、要は手帳をパタンと閉めた。
するとそのまま、ズカズカと教室に入っていく。

「すいませ~ん、山城さん?」

「え?」

呼ばれて振り向いたみつあみの少女の、1メートルくらい先で止まると、要はにこっと笑った。

「山城さん? ですか? あ、いや先輩か」

「えっと……はい? 山城だけど……」

――なにか? と問う寸前で、みつあみの少女こと、山城さんは言葉を濁した。この子誰?
という疑問と不審が顔に滲んでいる。

「あっ、良かった。実は京葉南の制服着た男子が――」

「え!?」

言いかけたその言葉に3人はどよめいた。その姿を見て、要はほくそえむ。

「門の前で待ってるって伝えてくれって」

にこりと笑いながら、要は親指で教室の出口を指差す。3人は顔を合わせて、静かに頷いた。そして山城さんは期待するように、窺うように問う。

「あの……その人ってもしかして、高坂くんって名前だったりする?」

「さあ……? すいません、名前は聞きはぐりました」

首を傾げながら、にかっと笑う要の顔を見てから、山城さんはすぐに席を立った。

「わかったわ、ありがとう」

言って嬉しそうに駆け出す。その後を2人の女子もきゃあきゃあ言いながら、楽しそうに駆けていった。

その姿を見送って、要はしたり顔でほくそえんだ。

< 58 / 109 >

この作品をシェア

pagetop