ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
あたし達は、とりあえず陸貝高校に4人で行ってきました。もちろん休日に行っても会えない可能性が高いので、平日に、早退して行って来ました。
もちろんあかねは「皆勤賞があ~!」と嘆いていたけれど、秋葉の「だったらついて来なくても良いんだぜ」の一言で「行くに決まってんでしょ!?」とヤル気になりました。
――あかねはツンデレですからね。
そして、陸海高校の正門にて「南春枝さんはご存知ですか!?」と聞きまくった結果、南春枝さんを見つけることが出来ました。
第一印象の南春枝さんは、落ち着いた雰囲気のある方で、肩まであるゆるい天然パーマの黒い髪を風に揺らしていました。
呉野幼子と南春枝の関係を探りたかったあたしは、不躾に南春枝さんに訊ねました。
「あの、呉野幼子という女の子をご存知ですか?」
「え?……いえ、知りませんけど、あのどちら様?」
南春枝さんは怪訝そうな顔をして、苦笑しながらあたし達に向かって訊ねた。
――ああ、そうだ。自己紹介もまだだった。
気持ちが先行しすぎたあたしをよそに、あかねが取り繕ったように微笑う。(わらう)
「私達は白石女子学園から参りました。ちょっと南さんにお伺いしたい事がありまして、あの、呉野幼子さんはご存じないのですよね?」
窺うようにして言うあかねに、南春枝さんは申し訳なさそうに「ええ」とだけ答えた。
そこですかさず、私はある人物の名を ババ~ン! と言ってやろうとしたわけです。ところがその矢先、南春枝さんからその人物の名を聞くことになったんです。
南春枝さんは、何かに気づいたように、はっとした表情をした後、こう言いました。
「白石女子学園って、埼玉にある学校?」
「えっ、ええ」
突然の事にあかねが驚いて答えると、あたしはピン!と来ました。
「そこ、私の昔の友達も通ってるのよ。多分今でも通ってると思うわ。中学の時にね、転校して行ったの。榎木夕菜っていうのよ、知ってる?」
(ほらほらキタ、キタ―――!!)
聞きたかった名前が聞けて、あたしは内心踊りまくりましたよ。
そこですかさず、あたしは携帯で撮ったお守りの写真を、南春枝さんに見せました。
「すみません。こんなの見たことないでしょうか?」
言いながら、携帯の画面を南春枝さんに向けると、南春枝さんは画面を覗き込んで「ああ」と呟いた。
「これ、知ってるわ。ほら、さっき言った榎木夕菜って子のよ」
――やぱりね!
あたしの予想が確信に変わり、あたしは内心興奮しましたよ。あたしの横で、秋葉と由希が驚きを隠せずにいたけれど、あかねは冷静そうに見えた。
そんなあたし達をよそに、南春枝さんは続けた。
「随分汚れちゃったのね。前も薄汚れてはいたけれど……でも、これがどうかしたの?」
「いえ、ちょっと……」
あかねはそう言葉を濁してから、こう質問をした。
「それより、このお守り、何で榎木さんのだって分かったんですか? こん
なに折れ曲がってしまっているのに……」
すると、意外な返事が返って来た。
「だってこのお守り、元々折れ曲がっていたのよ。えっと、確か……おばあさんから貰った物だって言っていたわ」
「え!? そうなんすか?」
秋葉が驚いて聞き返すと、南春枝さんは「ええ」と頷いた。
「なんでも、戦時中にポケットに入れていたんだけど、警報が鳴って急いで逃げている最中に転んでしまって、その拍子にお守りが落ちて踏んづけて曲がっちゃったんだって、そのお守りはおばあさんにとってはすごく大切なものだったらしいから、ショックでそれをしばらくその場で見ていたらしいの。でも、その場所が空中からちょうど見えない所だったみたいで、空襲から助かったって言ってたわね。戦争が終わった後は大事に保管しておいたんですって。そのおばあさんがくれた物って言ってたわ。それに、ほら」
そう言ってあたしが持っていた携帯写真のお守りの紐部分を触った。
「ここ、紐の色が一部違う所があるでしょ?」
「え?」
そう言われてあたしは携帯の写真を確認した。
「……あっ! 本当だ」
――確かに、一部色が違う。
紐の一部が他の紐よりも弱冠白く、きれいに見えた。あたし達が驚いていると、南春枝さんはこんな事を教えてくれた。
「その写真じゃ、汚れててよく見えないけど、夕菜が誤って紐を切ってしまった時に、まだ生きていたおばあさんが付け加えてくれた部分なんですって」
そうだったのかと、あたし達は思いました。
お守りの謎が解けて、あたしは次の謎を解くべく、南春枝さんに訊ねてみようと思いました。
その謎とは、呉野先輩のメッセージに書かれていたから、私達は南春枝さんに会いに来た。だから、てっきり南春枝さんと呉野先輩は何らかの繋がりがあったんじゃないかとあたしは思っていたんです。でも南春枝さんは呉野先輩を知らないという……だったら何故、呉野先輩は南春枝さんを知ることが出来たんだろう?
そこで、あたしは南春枝さんに呉野先輩の写真を見せてみました。
「南さん、これも見てもらっていいですか?」
南春枝さんは、パソコンからプリントアウトした呉野先輩の写真を見て「ああ」と一言呟いた。
「もしかして、この人が呉野さん?」
「はい!そうです!」
あたしが勢いよくそう言い放つと、南春枝さんは「そうなんだ」と呟いた。
「確か、夕菜が転校して行った数ヵ月後くらいに、お守りの事を話した子がいるって、その子と一緒に写った写真を送ってきた事があったのよ」
懐かしむようにそう言う南春枝さんは、納得するように、噛み締めてこう言った。
「ああ……確かにこの子だったわ」
名前は書いてなかったんだけどね、と付け足すと当時を懐かしんだ。
「お守りの事は、私にしか話したことないし、見せたことないって言ってたのよ、夕菜。お守りを見せてくれた時にね、でも転校して別の子に見せたって手紙に書いてあって、当時はなんだかちょっと、嫉妬したのよ」
そう恥ずかしそうに南春枝さんは語った。
――そんな南春枝さんをシャッターに収めたのが、あの写真です。
もちろんあかねは「皆勤賞があ~!」と嘆いていたけれど、秋葉の「だったらついて来なくても良いんだぜ」の一言で「行くに決まってんでしょ!?」とヤル気になりました。
――あかねはツンデレですからね。
そして、陸海高校の正門にて「南春枝さんはご存知ですか!?」と聞きまくった結果、南春枝さんを見つけることが出来ました。
第一印象の南春枝さんは、落ち着いた雰囲気のある方で、肩まであるゆるい天然パーマの黒い髪を風に揺らしていました。
呉野幼子と南春枝の関係を探りたかったあたしは、不躾に南春枝さんに訊ねました。
「あの、呉野幼子という女の子をご存知ですか?」
「え?……いえ、知りませんけど、あのどちら様?」
南春枝さんは怪訝そうな顔をして、苦笑しながらあたし達に向かって訊ねた。
――ああ、そうだ。自己紹介もまだだった。
気持ちが先行しすぎたあたしをよそに、あかねが取り繕ったように微笑う。(わらう)
「私達は白石女子学園から参りました。ちょっと南さんにお伺いしたい事がありまして、あの、呉野幼子さんはご存じないのですよね?」
窺うようにして言うあかねに、南春枝さんは申し訳なさそうに「ええ」とだけ答えた。
そこですかさず、私はある人物の名を ババ~ン! と言ってやろうとしたわけです。ところがその矢先、南春枝さんからその人物の名を聞くことになったんです。
南春枝さんは、何かに気づいたように、はっとした表情をした後、こう言いました。
「白石女子学園って、埼玉にある学校?」
「えっ、ええ」
突然の事にあかねが驚いて答えると、あたしはピン!と来ました。
「そこ、私の昔の友達も通ってるのよ。多分今でも通ってると思うわ。中学の時にね、転校して行ったの。榎木夕菜っていうのよ、知ってる?」
(ほらほらキタ、キタ―――!!)
聞きたかった名前が聞けて、あたしは内心踊りまくりましたよ。
そこですかさず、あたしは携帯で撮ったお守りの写真を、南春枝さんに見せました。
「すみません。こんなの見たことないでしょうか?」
言いながら、携帯の画面を南春枝さんに向けると、南春枝さんは画面を覗き込んで「ああ」と呟いた。
「これ、知ってるわ。ほら、さっき言った榎木夕菜って子のよ」
――やぱりね!
あたしの予想が確信に変わり、あたしは内心興奮しましたよ。あたしの横で、秋葉と由希が驚きを隠せずにいたけれど、あかねは冷静そうに見えた。
そんなあたし達をよそに、南春枝さんは続けた。
「随分汚れちゃったのね。前も薄汚れてはいたけれど……でも、これがどうかしたの?」
「いえ、ちょっと……」
あかねはそう言葉を濁してから、こう質問をした。
「それより、このお守り、何で榎木さんのだって分かったんですか? こん
なに折れ曲がってしまっているのに……」
すると、意外な返事が返って来た。
「だってこのお守り、元々折れ曲がっていたのよ。えっと、確か……おばあさんから貰った物だって言っていたわ」
「え!? そうなんすか?」
秋葉が驚いて聞き返すと、南春枝さんは「ええ」と頷いた。
「なんでも、戦時中にポケットに入れていたんだけど、警報が鳴って急いで逃げている最中に転んでしまって、その拍子にお守りが落ちて踏んづけて曲がっちゃったんだって、そのお守りはおばあさんにとってはすごく大切なものだったらしいから、ショックでそれをしばらくその場で見ていたらしいの。でも、その場所が空中からちょうど見えない所だったみたいで、空襲から助かったって言ってたわね。戦争が終わった後は大事に保管しておいたんですって。そのおばあさんがくれた物って言ってたわ。それに、ほら」
そう言ってあたしが持っていた携帯写真のお守りの紐部分を触った。
「ここ、紐の色が一部違う所があるでしょ?」
「え?」
そう言われてあたしは携帯の写真を確認した。
「……あっ! 本当だ」
――確かに、一部色が違う。
紐の一部が他の紐よりも弱冠白く、きれいに見えた。あたし達が驚いていると、南春枝さんはこんな事を教えてくれた。
「その写真じゃ、汚れててよく見えないけど、夕菜が誤って紐を切ってしまった時に、まだ生きていたおばあさんが付け加えてくれた部分なんですって」
そうだったのかと、あたし達は思いました。
お守りの謎が解けて、あたしは次の謎を解くべく、南春枝さんに訊ねてみようと思いました。
その謎とは、呉野先輩のメッセージに書かれていたから、私達は南春枝さんに会いに来た。だから、てっきり南春枝さんと呉野先輩は何らかの繋がりがあったんじゃないかとあたしは思っていたんです。でも南春枝さんは呉野先輩を知らないという……だったら何故、呉野先輩は南春枝さんを知ることが出来たんだろう?
そこで、あたしは南春枝さんに呉野先輩の写真を見せてみました。
「南さん、これも見てもらっていいですか?」
南春枝さんは、パソコンからプリントアウトした呉野先輩の写真を見て「ああ」と一言呟いた。
「もしかして、この人が呉野さん?」
「はい!そうです!」
あたしが勢いよくそう言い放つと、南春枝さんは「そうなんだ」と呟いた。
「確か、夕菜が転校して行った数ヵ月後くらいに、お守りの事を話した子がいるって、その子と一緒に写った写真を送ってきた事があったのよ」
懐かしむようにそう言う南春枝さんは、納得するように、噛み締めてこう言った。
「ああ……確かにこの子だったわ」
名前は書いてなかったんだけどね、と付け足すと当時を懐かしんだ。
「お守りの事は、私にしか話したことないし、見せたことないって言ってたのよ、夕菜。お守りを見せてくれた時にね、でも転校して別の子に見せたって手紙に書いてあって、当時はなんだかちょっと、嫉妬したのよ」
そう恥ずかしそうに南春枝さんは語った。
――そんな南春枝さんをシャッターに収めたのが、あの写真です。