ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
要がそう呟くと、秋葉は後ろを振り返り、要を見つめて親指を立てると「やった!」と小声で喜んだ。

その姿を見た要は、感心したように小声で呟く。

「さぁすが幼馴染ねぇ」

「おっしゃぁああ!!やるわよ~!!」

あかねがはりきって叫ぶ中、由希は不安そうに鏡を見つめていた。

――その時。

「ちょっとあなた達!そこで何してるの!?」

一斉に怒声が飛んできた方を振り向くと、美術準備室のドアの前に背の高い女の人が立っていた。

彼女は短い髪をかきあげると、静かに言った。

「ここがどんな所か知ってるの?はやく出なさい」

「す、すみません」

あかねは気まずそうに謝ると「行くよ」と促して、由希と要の袖をひっぱって女の人の横を通り過ぎようとした。

すると要がぴったっと足を止めた。

「ちょっと待ってあかね!」

「要?」

あかねは要の顔をまじまじと見つめる。

「先輩は何しにここへ?」

そう聞かれた女の人は、少し驚いたように要を見つめた。

「……私は」

言いながら、右腕につけた腕章を要に向かって見せると二コリと微笑む。

「風紀・日直なの」

白石女子学園では【風紀・日直】というクラスの役割がある。

その日の日直が放課後、クラス別に決められた場所へ見回りに行くという校則だ。

【風紀・日直】は腕にクラス別の腕章を腕に巻く。

「そうですか。失礼しました」

返事を聞いた要は、悪びれた様子もなくお辞儀をするとさっさと教室を後にした。

あかねは女の人と要を交互に見てから要を追いかけていった。

その後に由希と秋葉も続く。

あかねは要に追いつくと声を荒立てて叫んだ。

「ちょっと!要なんて事言うのよ!失礼でしょ!?あの人がどんな人か知らないの!?」

「ん~?知ってるよ」

気のない返事を返す要に「だったら!」と怒鳴ると秋葉が口を挟んだ。

「そんなに凄い人なのかよ?」

「……わたしも、知らない……」

由希も口に手を当ててモジモジと言った。

そんな二人を見つめてからあかねは呆れたようにため息をつく。




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