ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
「――あなたが、呉野先輩が落とされる前に隣のビルへ、ロングのかつらを被り、眼鏡をかけるという変装して入っていくのを、監視カメラが捕らえた映像と、その後、かつらと眼鏡を取り、帽子を深く被り、上着を着て、呉野先輩が落とされる十分ほど前にそのビルを出ていく姿が映っています。――あなたは、多分隣のビルに窓の鍵を開けに行った、もしくは開いているかどうか確認しに行ったんでしょうね」
言って、にやりと笑う。
「もちろん、呉野先輩が落とされた後にも、あなたが同じロングに眼鏡の変装で、ビルを出た映像も映っています……観ます?」
この質問に榎木は答えなかった。
俯いていて、要達からは榎木の顔を窺う事は出来なかったが、榎木は明らかに狼狽していた。
そんな榎木を知ってか知らずか、あかねが立て続けに質問をした。
「先輩がこの事件を起こしたとして、分からないこともあります。高村先輩の事件があった時、こんな証言が出てるんです「ショートの女とアップの女と高村先輩は会っていた」らしいですけど、高村先輩に何を言われたんですか? アップの女は誰なんですか? いきなり日吉先輩が皆元先輩を押し入れたという噂が広まったのは何故ですか? 高村先輩は殺人ですか? 日吉先輩と呉野先輩を襲った理由は?」
あかねがそう聞いても、榎木は黙ったままだった。
「あかねちゃん」
すると突然、由希が言葉を発した。全員が由希に注目すると、由希は意外な言葉を言い放った。
「榎木先輩の動機なら――ウチ解る」
『え?』
要以外の全員が一斉に呟くと、由希は淡々とこう言った。
「先輩には、霊能力はないんでしょ? ――幽霊は見えないんだよね」
「……な、に?」
不安の色を色濃く映した榎木が、思わず声を上げたが、その殆どが聞き取る事が出来なかった。そして一瞬ののちに蒼白になった顔を由希に向ける。
そんな榎木を思いやる気持ちがないのか、由希は冷淡に言ってのけた。それは明らかに軽蔑を含んでいる。
「先輩には霊能力はないんですよ」
由希が冷たい瞳を榎木に向けると、いつもの由希とのあまりの違いに、あかねと秋葉は戸惑った。そんな2人と由希を見て、要はある人物の名を口にした。
「――美奈、そこにいるよね?」
要に呼ばれた人物名に覚えのないあかねと秋葉は、不思議そうに首を傾げる。
すると入り口の影から、見覚えのある顔が出てきた。
――由希こと、美奈だ。
おずおすと、不安そうに、後ろを気にしながら出てきた彼女を、あかねと秋葉は驚愕して見つめた。もちろん、榎木も驚いて美奈と由希を交互に見つめる。
あかねと秋葉はあまりの事に唖然として口を開けたまま呆然としていた。そんな2人に美奈は弱々しく笑いかけた。
「――え?」
やっと、出たのがこの一言で、その後関を切ったように2人は要に詰め寄る。
「なんなの!? 誰なの!?」
「おい! 要、なんだこれ! 由希が2人いる!!」
「落ち着いて~」
要が軽くそう言って、簡単に説明を始めた。
「美奈は、由希の双子の妹で、2人は入れ替わりながら登校してたの」
『はあ!?』
理解不能と言うように驚いた2人を「まあまあ」となだめて、要は榎木に視線を戻す。
「今は、それどころじゃないでしょ。全部終わったら詳しく説明するからさ」
その要の言葉を合図にしたように、由希が美奈を連れて前に出た。
「美奈――ウチに成りすました美奈が、どうしてそのお守りを見つけられたと思いますか? ――以前美奈が、榎木先輩を見て、驚いた理由は何だと思いますか?」
「……知らないわ」
喉を鳴らす榎木は、不安そうに胸の前で手を握った。
そんな榎木に凛とした視線を送る由希と、毅然としようと必死に榎木を見つめる美奈をあかねと秋葉は静かに見守った。
――終わったら、ちゃんと説明してよね。
そう、あかねは要に呟いた。それを要は静かに頷いた。
そして由希は美奈の代わりに口を開く。
「……先輩の後ろに、高村先輩がいたからですよ。お守りも先輩が教えてくれました」
「はあ!? 何言ってるの!?」
意外な言葉に、榎木だけでなく秋葉もあかねも驚きを隠せないでいると、要がにこりと笑いながらフォローをした。
「先輩、この子の言ってる事は本当ですよ」
あかねと榎木は、あからさまに怪訝な表情で要を見つめる。秋葉は苦い顔で頬を掻いていた。
「実は日吉先輩にも憑いてたんですよ。日吉先輩の場合は高村先輩よりも、
皆元先輩だったんですけどね」
その発言にあかねと秋葉は話題に取り残されたような気持ちで由希と美奈を見つめる。
いまだに怪訝な表情から抜け出せない榎木に、要は楽しそうに笑う。
「信じられませんか? あかね達ならともかく、霊感少女のあなたが信じられないわけないですよね?」
その一言に、榎木はぐっと顔を引く。何かを言おうとするが、言葉が上手くまとまらない。その時、美奈が由希の傍から離れて要の傍に寄った。
静かに耳打ちする。
言って、にやりと笑う。
「もちろん、呉野先輩が落とされた後にも、あなたが同じロングに眼鏡の変装で、ビルを出た映像も映っています……観ます?」
この質問に榎木は答えなかった。
俯いていて、要達からは榎木の顔を窺う事は出来なかったが、榎木は明らかに狼狽していた。
そんな榎木を知ってか知らずか、あかねが立て続けに質問をした。
「先輩がこの事件を起こしたとして、分からないこともあります。高村先輩の事件があった時、こんな証言が出てるんです「ショートの女とアップの女と高村先輩は会っていた」らしいですけど、高村先輩に何を言われたんですか? アップの女は誰なんですか? いきなり日吉先輩が皆元先輩を押し入れたという噂が広まったのは何故ですか? 高村先輩は殺人ですか? 日吉先輩と呉野先輩を襲った理由は?」
あかねがそう聞いても、榎木は黙ったままだった。
「あかねちゃん」
すると突然、由希が言葉を発した。全員が由希に注目すると、由希は意外な言葉を言い放った。
「榎木先輩の動機なら――ウチ解る」
『え?』
要以外の全員が一斉に呟くと、由希は淡々とこう言った。
「先輩には、霊能力はないんでしょ? ――幽霊は見えないんだよね」
「……な、に?」
不安の色を色濃く映した榎木が、思わず声を上げたが、その殆どが聞き取る事が出来なかった。そして一瞬ののちに蒼白になった顔を由希に向ける。
そんな榎木を思いやる気持ちがないのか、由希は冷淡に言ってのけた。それは明らかに軽蔑を含んでいる。
「先輩には霊能力はないんですよ」
由希が冷たい瞳を榎木に向けると、いつもの由希とのあまりの違いに、あかねと秋葉は戸惑った。そんな2人と由希を見て、要はある人物の名を口にした。
「――美奈、そこにいるよね?」
要に呼ばれた人物名に覚えのないあかねと秋葉は、不思議そうに首を傾げる。
すると入り口の影から、見覚えのある顔が出てきた。
――由希こと、美奈だ。
おずおすと、不安そうに、後ろを気にしながら出てきた彼女を、あかねと秋葉は驚愕して見つめた。もちろん、榎木も驚いて美奈と由希を交互に見つめる。
あかねと秋葉はあまりの事に唖然として口を開けたまま呆然としていた。そんな2人に美奈は弱々しく笑いかけた。
「――え?」
やっと、出たのがこの一言で、その後関を切ったように2人は要に詰め寄る。
「なんなの!? 誰なの!?」
「おい! 要、なんだこれ! 由希が2人いる!!」
「落ち着いて~」
要が軽くそう言って、簡単に説明を始めた。
「美奈は、由希の双子の妹で、2人は入れ替わりながら登校してたの」
『はあ!?』
理解不能と言うように驚いた2人を「まあまあ」となだめて、要は榎木に視線を戻す。
「今は、それどころじゃないでしょ。全部終わったら詳しく説明するからさ」
その要の言葉を合図にしたように、由希が美奈を連れて前に出た。
「美奈――ウチに成りすました美奈が、どうしてそのお守りを見つけられたと思いますか? ――以前美奈が、榎木先輩を見て、驚いた理由は何だと思いますか?」
「……知らないわ」
喉を鳴らす榎木は、不安そうに胸の前で手を握った。
そんな榎木に凛とした視線を送る由希と、毅然としようと必死に榎木を見つめる美奈をあかねと秋葉は静かに見守った。
――終わったら、ちゃんと説明してよね。
そう、あかねは要に呟いた。それを要は静かに頷いた。
そして由希は美奈の代わりに口を開く。
「……先輩の後ろに、高村先輩がいたからですよ。お守りも先輩が教えてくれました」
「はあ!? 何言ってるの!?」
意外な言葉に、榎木だけでなく秋葉もあかねも驚きを隠せないでいると、要がにこりと笑いながらフォローをした。
「先輩、この子の言ってる事は本当ですよ」
あかねと榎木は、あからさまに怪訝な表情で要を見つめる。秋葉は苦い顔で頬を掻いていた。
「実は日吉先輩にも憑いてたんですよ。日吉先輩の場合は高村先輩よりも、
皆元先輩だったんですけどね」
その発言にあかねと秋葉は話題に取り残されたような気持ちで由希と美奈を見つめる。
いまだに怪訝な表情から抜け出せない榎木に、要は楽しそうに笑う。
「信じられませんか? あかね達ならともかく、霊感少女のあなたが信じられないわけないですよね?」
その一言に、榎木はぐっと顔を引く。何かを言おうとするが、言葉が上手くまとまらない。その時、美奈が由希の傍から離れて要の傍に寄った。
静かに耳打ちする。