ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
――彼女の日記の初めにはこう書かれていました。

『今日、榎木に『もう一人の私が見えた気がする』と言われた。面と向って言われたわけではないけれど……大丈夫、気にしない。見間違いかも知れないって、榎木も言ってくれたし』

『今日の帰り道、誰かに後をつけられていた気がする。でも、気のせいだよね』

『今日、手紙が届いた『いつでも見てる』って……何なの!?消印は無かったから、誰かがそのまま入れてるの? なんだか気味が悪い』

『今日も届いた。昨日もポストに入っていた。――一体何なの!?』

『今日の手紙の内容は、いつもと違った『早く、早く、私と代わって!!』って、血みたいな色で、殴り書きしてあって……何なの!?誰なの!!?』

『また届いた……これって、ドッペルゲンガー?』

『恐い! 榎木の言った、『もう一人の私』何ているわけはないのに……!』

『もう、何日になる? ひきこもってから……。もう毛布に包まれていなきゃ、安心なんて出来ない。ほんの少しの安心のために、トイレにだっていけない』

『もうダメかも知れない。優梨、弘、毎日来てくれるのに、出て行けなくてごめん! 怖いの! こんなのもう絶えられないの……お願い、誰か……!』

『――ごめん』


――日記は、ここで終わっていたわ。
――そして、最後のページのあの一言……それが皆元の遺書だった。


「脅迫状は、怖がった皆元が全部焼いてしまっていて、残ってなかったの。だから、誰が書いたものか、警察も突き止めることが出来なかった。――そして、その死に疑問の点はなく、自殺として処理された」
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