ドッペルゲンガー ~怪事件捜査倶楽部~。
「まさか、あの時、お守りを落としていたなんてね」
はあ、と息を吐き出した榎木は、視線を落とした。
「日吉先輩は多分、あなたが立ち去った後、あなたのお守りを握って傷口付近につけたんだと思います。じゃなきゃ、あんなに血が付着するわけがありませんから。そして、あなたが戻ってくる可能性を考えて、懇親の力を振り絞ってお守りを茂みに投げたんでしょうね。助け舟が来ているのも分からずに、死を覚悟して、あなたに一泡ふかせようと思ったんじゃないですかね。「ただじゃ転ばないわよ!」ってね」
ニコリと要が笑うと榎木は「ふっ」と噴出して、自嘲した。
「日吉らしいわね」
言って、榎木は虚空を見つめた。
「本当、日吉は、そういうやつなのよね。ずる賢くて、卑怯で、負けず嫌いで、臆病で……そして、誰一人信じることが出来ない――哀れな女」
――まるで、もう一人の私みたいだ――。
浮かんだこの言葉を、榎木が口に出す事はなかった。そして、吹っ切るように無理に笑った。
「日吉はね、写メなんて撮ってなかったのよ」
『ええ!?』
満場一致で驚愕すると、榎木は「してやられた!」という表情をして、鼻をシワクチャにした。
「しばらく走って、人目のつかない場所で確認したの。何度も何度も目を通したし、SDカードも見てみたけど、証拠写真なんて一枚もなかった――携帯はデータを全部消して、念のため折って壊して、川に沈めて捨てたわ。ナイフは川の水できれいに洗って、指紋もふき取って、ゴミ捨て場にあったゴミ袋の中に紛らわせた。日吉に捕まれて血がついた上着は幸い薄いパーカーだったから燃やしたわ」
言って榎木は自嘲する。
「私、一応安心したのよ。なのに、まさかあの呉野に感づかれるなんてね。お守りの事なんて、呉野はとっくに忘れてるんだと思ってた……だって、話の流れで出ただけのたわいない話だったのよ? 私自信だって、呉野に見せた事なんてとっくに忘れてたもの――」
はあ、と息を吐き出した榎木は、視線を落とした。
「日吉先輩は多分、あなたが立ち去った後、あなたのお守りを握って傷口付近につけたんだと思います。じゃなきゃ、あんなに血が付着するわけがありませんから。そして、あなたが戻ってくる可能性を考えて、懇親の力を振り絞ってお守りを茂みに投げたんでしょうね。助け舟が来ているのも分からずに、死を覚悟して、あなたに一泡ふかせようと思ったんじゃないですかね。「ただじゃ転ばないわよ!」ってね」
ニコリと要が笑うと榎木は「ふっ」と噴出して、自嘲した。
「日吉らしいわね」
言って、榎木は虚空を見つめた。
「本当、日吉は、そういうやつなのよね。ずる賢くて、卑怯で、負けず嫌いで、臆病で……そして、誰一人信じることが出来ない――哀れな女」
――まるで、もう一人の私みたいだ――。
浮かんだこの言葉を、榎木が口に出す事はなかった。そして、吹っ切るように無理に笑った。
「日吉はね、写メなんて撮ってなかったのよ」
『ええ!?』
満場一致で驚愕すると、榎木は「してやられた!」という表情をして、鼻をシワクチャにした。
「しばらく走って、人目のつかない場所で確認したの。何度も何度も目を通したし、SDカードも見てみたけど、証拠写真なんて一枚もなかった――携帯はデータを全部消して、念のため折って壊して、川に沈めて捨てたわ。ナイフは川の水できれいに洗って、指紋もふき取って、ゴミ捨て場にあったゴミ袋の中に紛らわせた。日吉に捕まれて血がついた上着は幸い薄いパーカーだったから燃やしたわ」
言って榎木は自嘲する。
「私、一応安心したのよ。なのに、まさかあの呉野に感づかれるなんてね。お守りの事なんて、呉野はとっくに忘れてるんだと思ってた……だって、話の流れで出ただけのたわいない話だったのよ? 私自信だって、呉野に見せた事なんてとっくに忘れてたもの――」