太陽の竜と闇の青年
「誰?ラカとサクラって」


私は故を微笑みながら見た。


「サクラは私の侍従で胃痙攣持ちの面白い女性で、ラカはフウの侍従でカッコよくて、サクラが好きなんだよ。実はサクラもラカのことが好きなんだけど、二人とも告白はしないんだって。早く結婚しちゃえばいいのになぁ……」


すると、故がピョンッと楽しそうに飛び跳ねた。


狐うどんがこぼれないかと心配したけど、いつの間にか狐うどんが入っていた丼は空っぽになっていた。


……早食い。


私はその言葉を飲み込んだ。


「面白そうな二人だな。俺様、意地悪する甲斐がある気がする!!」


私は故を落ち着かせた。


「ダメだよ。サクラは胃痙攣持ちだから、あんまりイジメちゃ胃痙攣で倒れちゃうよ」


その言葉に笑ったのは当然フウだ。


「あーはっはっは!!!!婚約が嫌で父上の部屋の扉を蹴破って、サクラを人生最大の胃痙攣にさせたのは誰だっけー?」


私はフウを睨みながら壱を見た。


何か壱が私に対する印象が変わってしまったら困る気がしたから。


すると、バチッと目があってしまった。


何か言おうと思ったけど、何も言うことがなかった。


フウが言ってたのは事実だし……。


すると、壱の口が開いた。


「俺は父上を殴ったことがある」


……えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!


私たちの間に沈黙と驚きの空気が流れた。


「ち、父上殿を殴ったって……。壱殿、どんな大変なことを犯したと思って……」


「そ、そうだよ。父上を殴るなんて王子として最もいけないことじゃないか。僕もルウも流石にそこまではいったことはないよ」


「そうそう。流石の私でも狸親父を殴るなんてことはしなかったよ」


すると、壱は私から順にフウ、故と見ていき、微笑した。


「冗談だ」


私たちは肩の力を抜いた。


「「冗談かよ~~」」


壱が冗談を言うと本当か嘘かわからなくなってしまう。


私たちはそれから食堂で少しの間を過ごした。
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