太陽の竜と闇の青年
目をあけると、そこは牢屋だった。


じっとりとした空気が体中を包む。


ゆっくりと起きあがると、後頭部がズキズキと痛んだ。


カチャカチャと音がしたと思うと、階段から誰かが降りてきた。


その人は青年で燃えるような真っ赤な短髪でキリッとした目をしており、綺麗な顔だった。


まさに砂漠の民、といえるような服装に、先が少し上に尖った柔らかそうな靴を履いていた。


頭にはターバンではなく、不思議な模様の描かれた薄い布で赤色のヘアバンドのようなものをしていた。


首には鳥の羽が連なったネックレスをかけていて、手首には金の腕輪をカチッと止めていた。(ように、うっすらとだけど見えた気がする)


彼は手に私のご飯を持っていた。


牢の鍵をあけ、中にご飯を入れると、すぐに扉は閉められた。


ちぇぇ……。


逃げようと思ったのに。


彼は牢の監視なのか、壁に背をついて座ってこちらをみていた。


私はゆっくりとご飯に手をのばしてパクリと一口食べた。


それはお世辞でも美味しいと言いようのない物だった。


お粥……といっても、水のような白い液体だ。


チラッと彼をみると彼は干し肉を食べていた。


干し肉は噛みしめるのがとっても大変で、私は少し苦手だった。


味は美味しいとも不味いとも言いにくい物。


そんなものを食べていた。


「あの……」


私が声をかけても彼はこちらを見ずに黙々と干し肉を噛む。


「そんな固いもの食べてて美味しいですか?」


それでも彼は黙々と噛み続ける。


そして干し肉の半分をブチッと手で細かく契った。


すごく細かくなると突然私のほうへと歩いてきてお粥に細かくちぎれた干し肉を入れてきた。


「……?」


何でこんな行動をとるのか疑問に思ったけど、とりあえず食べてみた。


すると干し肉は柔らかくなっていて、とても食べやすかったし、干し肉が入ったことでただのお粥ではなくなった。


なんだかんだいってこの人、優しいのかも。


「ありがとう」


私が笑顔でお礼をかえすと彼は無表情に目を眇めた。
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