太陽の竜と闇の青年
そのとき、上で足音がした。


鳥の声も。


気づけば人の声が聞こえる。


もしかしてここ、集落の下なのかも。


「あの……」


私が彼に話しかけても、彼はまた干し肉を食べ始めてしまった。


まぁ、返事は貰えないって思ってたけどね。


勝手に話すもんね。


「ここは草の匂いや鳥のせせらぎが聞こえます。私いっつも不思議に思うことがあるの。空に浮かぶ白い雲はどこで生まれたたのかな?とか水の流れはどこに行き着くのだろう?とか。なんで大地はこんなにも輝いているのかなとか。毎日いろんな発見をする。自然を感じる。そのたびに囁くいのちの声は今を生きる喜びを誇るようなんだ。私はそれをもっと感じたい。だから旅にでた。そんな私が捕まった理由がわからないんだ。どうしてなのか教えてくれない?」


彼をみると彼はジッとこちらをみていた。


その目には絶望も、欲望も、希望もなかった。


ただ、目の前にあることを終わらせようとする目だった。


その目は少しだけ小さい時の私に似ていた。
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