太陽の竜と闇の青年
[壱]


「ここが集落……」


殺風景な景色の中にポツリとテントが何十個か建てられていた。


そして、その中心にレンガでできた建物があった。


「とにかく砂漠の民に話しかけてみましょう」


ラカが真剣な面もちで集落へと入っていった。


……。


「にしても、人いないねー」


フウは笑いながら言った。


でも、その額には青筋が浮かんでいてルウが連れ去られたことにかなり苛立ちをおぼえているようだった。


そのとき、テントから女性がでてきた。


その女性は俺たちをみてビックリしていたけど、すぐに手招きをしてくれた。


俺たちは馬を集落の入り口において、女性のテントの中へと入っていった。


「あなたたち、誰か探しているの?」


女性はズボンを履いていた。


確かにルウの服装に似ている……。


「えぇ。わたくしたちの仲間が突然連れ去られた、と言いますか、消えたんです」


サクラが女性の対応に適した発言をした。


女性は、そぅ、と言って俺たちに水をさしだした。


「ティーはティファナと言います。砂漠の国の町長。といっても、ここを仕切っているのはティーじゃないわ。ヘルという女性が仕切っているの」


ティファナと言った女性は少しだけ声のトーンを下げた。


「その言い方だと、俺たちの仲間がどこにいるのか分かっているんだな?」


俺がティファナを睨みながら訪ねると、ティファナは首をすくめた。


「こらこら壱。ティファナさんに怒っても仕方ないじゃんか。ルウを連れ去ったのはティファナさんじゃないんだから」


フウが俺をなだめた。


渋々だがおとなしくなると、ティファナは話を進めた。


「恐らくあなたたちの仲間を連れ去ったのはシルバだと思います。でも、シルバは悪くありません!!連れ去れと命令したのはヘルなのですから!!」


ティファナは必死になって俺たちに言ってきた。


だけど、俺たちは……。


「ティファナさん、シルバとヘルという方はどういう方なのですか?」


そう。


二人を知らない。


だからそう言われても困る。


ティファナは、あぁ、そうでした。とつぶやいた。
< 362 / 824 >

この作品をシェア

pagetop