太陽の竜と闇の青年
「申し訳ありません。シルバは砂漠の民の無口な剣士で、身の丈もある大きな刀をかまえているのです。この地域では珍しくまじないが使えないため剣術を極めたのです。まるで人形のように表情をかえず、言葉も発さずに淡々と剣をふるうだけの男の子で、名前の由来は砂漠の民の言葉で「砂漠の風」といいます。心を閉ざしているのでまったく話を聞こうとしない上、彼は心を失い、ヘルによって操られる人形のような存在なのです。彼は虚心の剣士と言われているのです。ヘルですが砂漠の民の指導者であり、強力なまじない師なんです。悪人ですが剛毅な性格で筋は通っているんです。野望を果たすためならばどんな手でも使い、まじないを極めた上に、南飛という攻撃が使えるのです。南飛というのは短剣やボウガンを何千メートル先まで投げることのできる技です。そうですね、砂漠の民についても少しはなしておきましょうか。砂漠の民は古代の民の生き残りであるという噂があります。あぁ、あと、ヘルの部下の砂漠の民は彼女がまじないから作りだした人形で、外見からは想像がつかないほどの力を持っております。ですが、それは倒されると砂に戻るのです」


シルバ……。


少しだけ自分ににている気がした。


だから少しだけシルバという男に興味が沸いた。


だが、シルバはルウを連れ去った上、不安にさせているであろう男だ。


ことによっては許すわけにはいかないかもしれない。


「一つ聞きたいのだが、貴様はなぜ俺たちにそのようなことを教えてくれるのだ?ふつうなら教えないだろう。ましてや、砂漠の民同士だろう?」


白虎はシルバが疑わしいのか、質問を投げかけた。


だけどその質問は俺も思っていた疑問だった。


ティファナはうつむいた。


「シルバはティーの娘の好きだった子でした」


「だからといって気にかけるのはおかしいだろう?」


白虎がスッとティファナをにらむ。


「最後まで聞いてください!」


ティファナが声を荒げた。


その目には涙が溜まっていた。


さすがの白虎もこれには黙るしかない。


「ティーの娘は死んでしまったのです。ヘルの儀式の生け贄にされて……」


ティファナは、それを思い出したかのように崩れ泣いた。


「何の儀式だ!?何のために生け贄をとったんだ!!!」


白虎の次はフウが壊れたようにティファナに突っかかった。


けれど、俺がそれを止める。


不安なのは分かる。


もしかしたらルウがその儀式の生け贄にされるかもしれないから。


そんな不安な気持ちが俺にも広がっている。


だけど、俺たちよりも悲しいのはティファナだと思う。


ティファナの娘は殺されている。


だけど、ルウは殺されていないかもしれない。


いや、殺されていないと信じたいから。
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