太陽の竜と闇の青年

「ヘルは不老不死になることを夢見ています。そのためには若い女の生け贄が必要なんです。それに選ばれたのがティーの娘だったのです。ティーの娘はティーの目の前で火炙りにされてしまったのです。ティーの娘が火炙りにされて４日後、ティーは娘の遺言書を見つけたのです。その内容に、［私が死んだらシルバを気にかけてください］とあったのです。ティーの娘は本当にシルバが好きだったのです。ですが、シルバは昔から孤独な青年。今でもいわれていますが、本当に虚心の剣士なんです。小さい頃に親を二人ともヘルの儀式の生け贄にされてしまい、自分一人で生きてきた青年で、しかも、シルバはここでは使えないといけない［まじない］ができないためにここでは嫌悪されていました。だからなのでしょう。シルバは孤独に身を包むようになりました。ですがシルバは綺麗な顔立ちになかなかのハスキーボイス、そして剣の腕がピカイチなのです。ティーの娘は一度シルバに助けられ一目惚れに落ちてしまったのです。ですが、シルバは恋というものに興味がなくまったくティーの娘を相手にしませんでした」


俺は汗ばんだ手を自分の服で拭いた。


我慢しないといけない。


最後まで話を聞かなければならない。


シルバのことを知り、ヘルのことを知らなければならない。


ルウは殺されない。


絶対に。


「そして、シルバが１３歳になったとき、ヘルがシルバを自分の部下として招待したのです。ティーは、てっきりシルバは断ると思っていました。しかし、シルバはヘルの部下になることを承諾したのです」


クラウドが手をあげた。


「何でシルバさんは承諾したんだろう？だって親を二人も殺された憎い人だよ？」


ティファナはクラウドの言葉にうなずいた。


「ティーもずっと考えていました。ですが、シルバは仇を打つ、などということに興味がないと思うのです。ただ過去を忘れ、今を生きるという気持ちがあるんだと思います。だからシルバは今がすべて。だから昔を知っても意味がないと思っているんだと思います。ですが、それがシルバの受け入れるってことでしたら、確かに聞こえはいいのかもしれませんが、そんなの寂しいですよね。人の想いも自分の想いも現実もこのまま体にためこんでいたら、シルバはいつか潰れてしまいますよ」


ハッとフウが息を吸い込んだ。


俺も驚いた。


それはドクター・マランがルウについてはなしたのと同じことをティファナが言っていたから。


もしかしたら、シルバは俺ではなく、ルウに似ているのかもしれない。


「それからというもの、シルバはヘルの部下として働いています。シルバは腕のたつ剣士です。だからヘルはそれを有効に使っています。シルバが部下になってからというもの、儀式が何回も起こっています。シルバはもう自分の心を捨ててしまったのでしょうか」