太陽の竜と闇の青年
「ルウは無茶苦茶で、すごく人を心配させる。だが、とても無邪気で明るくて人を助ける力がある。困っている人を見捨てれないっていう感情を持っているんだと思う。人はそれをお人好しというけど、ルウは……そうだな、本当にお人好しだ。だけどそれが逆によかったりする。俺はそのお人好しのおかげで助かった。俺は暗殺者っていう仕事をしていたんだ。暗殺者っていう仕事は……人を無差別に殺す仕事だ。俺は人を殺しすぎていた。そう。あのときの俺は人を殺す化け物さ。だからもう人間に戻れないと思っていた。だけどルウが俺を助けてくれた。ルウの笑顔は最高だ。周りが太陽みたいに明るくなる。だが、ルウは一人で何もかも抱え込む癖がある。自分一人で悲しいこともつらいことも抱え込んで、誰にもバレないようにしている。だからより一層助けたくなる存在なんだ。あの無邪気な笑顔をなくさないようにするためにも、俺はルウを助けたいと思っている」


これが恋心っていうのは内緒だがな。


すると、ティファナが微笑んだ。


「シルバもその方に出会えたならば、心を開いてくれるのでしょうか?声が聞けるのでしょうか?シルバは本当は優しい子なんです。お願いします助けてください」


ティファナは深く土下座をした。


クラウドは戸惑い、サクラとラカは笑っていた。


「ティファナ様、顔をお上げください」


サクラの言葉にティファナはゆっくりと顔をあげた。


「白虎もフウもあぁ言っているが絶対にシルバは見捨てられないだろう。ルウとシルバは似ている部分があるからな」


俺がそう言うと、ティファナは顔を輝かせた。


「そこで聞きたいことがあるのですが、そのヘル様とシルバ様がいる場所、それから儀式を行う場所はどこなのですか?」


サクラが腰を浮かせて聞いた。


ティファナは右を指さした。


「集落の中心にある大きなレンガでできた建物です。あそこはウィルン塔といって、シルバとヘル、そしてその部下以外は入れません。先ほども言ったとおり、塔の中にはヘルの[まじない]で作られた砂です。倒せば砂になって消えます。ですが、力は強いです。半端な覚悟でいかないほうがいいでしょう。命乞いをするなら、今だと思います」


俺はフッと鼻で笑い、ティファナに向かって言った。


「俺たちは旅をすると決めた時点で命なんて捨てている。もちろん、半端な覚悟で旅をしてきたわけではない。俺たちにはそれだけの力がある。心配することはない」


ティファナは小さくうなずいて俺たちを見送った。


俺たちは走って塔まで行った。

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