太陽の竜と闇の青年
「っていうか、そんなこと今はどうでもいいんだって!ジャリスについてだよ!例えば私の体をジャリスが乗っ取ったとしても、外見は私なんだから中身が変わったら母上も父上もフウも壱も不思議に思うはずだよね?そうなったらジャリスはどうするのかな?」


フィンドは足を組んだ。


「んなこと鬼が知ってたまるか。だが、もし鬼がジャリスだとすれば、今までの記憶をすべて書き換える。ま、それだけの力があればの話だけどな」


私はフィンドを凝視した。


それだ!


ジャリスには充分力が溜まっている。


ずっと眠っていた分、有り余っているくらいだろう。


きっと皆の記憶の中にいる「私」を「ジャリス」へと変えるのだろう。


……最悪だ……。


「もしそうだとしたら、皆私のことを忘るの?」


フィンドは頭を振った。


「一度だけそういう体験をしたことが鬼もある。だが、鬼たちみたいな現実にいない奴ら……そうだな、シャーマンとかがそうだな。そいつらの記憶は神のジャリスだといっても、絶対にかきかえることはできないんだ。シャーマンは神を作った者ともいわれているからな。鬼はシャーマンとはぜんぜん違う魔物だが、生きている世界が違う。つまり異次元から来たものだから、人間ではない。だから鬼の記憶は消えない。だが……鬼は貴様の体に入るものだから鬼ばジャリスに捕らえられるかもしれないな……」


ふうぅぅううーーん。


つまり、私って結構危険な状態に立っているってわけね。


「壱と婚約交わしたばっかなのに……」


それを聞いていたフィンドが思い出したように言った。


「そういえば、今日出会ったイコという少年だが……」


フィンドはそこで言葉を止めた。


イコがどうかしたのかな?


私が首を傾げると、フィンドは重重しく口を開けた。


「アイツからは邪気の気配がした。その内、心を奪われて貴様を殺す側に立つかもしれない人物だぞ」


私は目を見開いた。


そんなことありえない。


イコは昔から弱くて、何もできない子だった。


私とずっと一緒にいた。


イコはいつも私についてきていた。


敵になるなんてことは……。


「そ、その心を奪われたってどういうこと?」


フィンドは、ハー……とため息をついた。


「ジャリスはその内、貴様が邪魔になると思い始める。貴様の体は必要だが、貴様の意志は必要ない。だから、貴様の身近で攻撃しにくい奴の心を奪い、貴様を殺すという計画だろう。体は傷がついても治せる。だが、死んでしまった者の意志は元に戻せない。そうなれば貴様はずっと意志のままこの世をうろちょろするハメになるだろうな」


ざ、残酷だ……。
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