太陽の竜と闇の青年
私たちは首を傾げた。


フィンドは長い人差し指をピンとたてて、それを横に振った。


「アレは鬼たちよりも天才かもしれない。学力も能力もすべてが完璧な奴だ」


白虎は誰か思い浮かべたのか、顔をあげた。


「なるほど。アイツは本物の天才だ」


フィンドはニヤリと笑う。


「あぁ。生まれつきの天才、空風壱だよ」


壱……。


確かに壱は天才といってもおかしくない。


私が納得していると、フィンドがこちらをみた。


「貴様とウィン=フウは生まれつきの天才ではないな」


白虎は私をみた。


「ん?あぁ。そうだよ。生まれつきの天才ではないなぁ。今も天才ではないけどね。あはは」


フィンドが微笑を浮かべた。


「しかし、貴様はコツコツと実力を積み上げた天才なのではないのか?弱いものは弱いものなりに強くなってみせようとしたのだろう?」


私はフィンドに図星を突かれたけど、あはははと笑ってごまかした。


私とフウはフィンドの言ったとおり昔から身体能力が高かったわけではない。


竜の民だからといって、天才として生まれてくることは絶対にないのだ。


それならば、修行や練習をしまくって天才に追いついてやろうという考えで私たちは実力をこつこつと何年もかけてあげていった。


そして、今もまだ実力をあげようと励んでいる。


「さっきの白虎の話を聞いていて思ったんだけど、白虎はジャリスによって記憶を消されることはないっていうこと?」


白虎はこくりとうなずいた。


「えぇ。元からジャリスの眼中には俺はいないでしょうしね」


フィンドが、あ?と声をあげた。


「何故だ?四神の中ではお前が一番頼りになると思うんだが」


白虎は肩をすくめた。


「俺はジャリスには従いたくなかったからな。ジャリスには反抗ばかりしていたんだ。だからか知らないが、ジャリスは俺を構わなくなった。ま、ラッキーなことだったけどな」


反抗的な白虎……。


一瞬だけ恐ろしい考えをしてしまった。


私は頭をブンブンと振ると、白虎をみた。


「よかった。心強い味方ができて。これで私が消えても安心だね」


白虎はピクリと眉を動かした。
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