愛いっぱいCHU
振り返った先生の目は私じゃなく私が持っているアルバムに向けられていた。

「お前・・・!」

「・・・先生・・?私・・彩さんには勝てないね・・」

「・・・」

先生はそれでも黙っていた。


何か言って欲しい。そんなことないよ、とか・・。そんなこと考えるな、とか・・。

そんな期待も・・しちゃダメなのかな・・。


「先生、すごく幸せそうだね。私、先生にこんな顔させてあげたことないもんね。いつも悩ませてばっかり。ごめんね」

私一人でしゃべってる・・。

口が止まらないんだよ・・。

なにか言ってないと身が持たないんだよ・・。

「すごい好きってのが伝わってくるね。だって先生は彩さんが好きなんだもんね、当たり前か」

だんだん涙が出てきた。

言ってて途中から涙声だ・・。

何も言ってくれない先生に対しても私の気持ちはますますエスカレートしていった。

「先生、結局私のことなんて好きなんかじゃないんでしょ!?どうして恋人になんてしたの!?私に彩さんの代わりなんてできるわけないじゃん!」

戦わずして負けている。

『あなたなんて入る隙ないんだから』

とでも言われているよう・・。

見せつけられている・・先生との仲を・・。先生との愛情の深さを・・。

「私がいくら好きでも彩さんには勝てないの!?こんなに好きなのに!私だって先生のこと好きなんだよ!?」

感情が先走って声も荒げてしゃべってしまっている。

・・もう、ダメだ・・。

私、自分から壊してるじゃん・・。

「・・・わかったよ」

「え・・」

先生は一歩、二歩と私の方に近づいてきた。

そして私の持っていたアルバムを取り上げた。

私は呆然と先生の行動を追っていた。

先生はアルバムから先生と彩さんが写っていたさっきの写真を取り出し灰皿の上におきライターで火をつけた。

そして、そのアルバムをゴミ箱の中に投げ捨てた。



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