愛いっぱいCHU
「3ヶ月後・・・俺は、彩を殺した」

・・・え・・・

「・え?・・こ、殺した・・?」

殺・・したって言ったんだよ・・・ね・・?

私はあまりの衝撃的事実に思わず周りにいる沙都と陽子さんを見た。

二人とも下を向いたまま過去を思い出しているようだった。

「・・・・」

どうしてなの・・。

本当に・・殺した・・・って

「せ、先生?」

私は先生の顔をそっと見つめた。

「あすか・・」

先生は私の名前を呼んで微笑みながらそっと頭をなでてくれた。

そんな先生を見てると・・・とてもつらい。

そしてまた先生は話しだした。

「俺と彩は結婚して幸せそのものだった・・。毎日毎日飽きるくらい傍にいて・・でも突然俺の目の前に彩のことをずっと好きだった男が現れて・・俺に向かってナイフを刺した・・。よくみたら俺が刺される瞬間に彩が俺の前に立ちはだかって・・・俺の身代わりで刺されて・・・それで死んだ」

・・・私はなんて言葉をかけていいのかわからなかった。

実際、私も今何を考えているのか・・自分でもわからない・・。

そう話している先生はさっきまでの冷静さはなく、精気、魂、すべてが抜き取られてまるで人形のようだった。

「その数日後、彩のカバンの中から精神安定剤をみつけた。俺は気がつかなかったんだ・・。彩を付けねらうストーカーの存在にも、そのことで悩み、苦しんでいる彩のことも・・」

先生は今きっと思い出してる・・。今の先生はちょうど5年前の自分・・。

彩さんを亡くした後の・・一番傷ついているとき・・。

そして先生は静かに言う・・。

「俺が・・殺したんだ・・彩は俺にさえ出逢ってなければ・・あの雨の日に出逢ってさえいなければ・・俺が・・俺が殺したんだ・・」

先・・生・・そんな・・

私・・涙が出るくらい悲しいよ・・

普段、冷静で物事を素早く対処できたりする先生が魂抜けたみたいになってて・・。

見てて、つらい・・。

でも、彩さんはきっと・・。
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