愛いっぱいCHU
「そうよっ」

急に怒りをあらわにした陽子さんが怒鳴った。

「そうよっ、和志が・・和志が彩を殺したのよっ。あの日出逢ってさえいなければ・・彩は死なずにすんだのよっ」

よ・・陽子さん。

もう今の陽子さんを止められる人はいない。

それをじっと聞いている先生・・。

陽子さんは続ける。

「だからっ、今まで和志の傍にひっついてくる女たちを追い払った。・・そうよっ、私は彩なのよっ。彩の意志を受け継いだのよっ」

・・よう・・こ・さん・・。

違う・・そうじゃないよ・・陽子さん・・。

私・・陽子さんの心が何となくわかる。

「本当にそうなの・・・?陽子さ・・ん」

私はそっと陽子さんに向かって問いた。

だってそれは・・本当の陽子さんの気持ちじゃないから・・。

彩さんのことを想う陽子さん。

この世でたった一人だった家族・・。

私はそのこともふまえた上でさらに話を続けた。

「彩さんの意志・・じゃないでしょ・・?そんなんじゃないよ・・陽子さん・・・先生のこと・・好きなんでしょ・・?好きだから先生の傍に寄る女の子追い払ったりしたんでしょ?彩さんの意志じゃなくて・・陽子さんの意志でしょ・・?」

私、前にも言ったことがある・・。

私が陽子さんに刺された時・・。

先生の傍でウロチョロする私を刺した陽子さんの気持ちわかるって・・。

私だったらそんなことじゃ済まないと思うって・・

そう、私が何で陽子さんの気持ちがわかるって言ったのか・・私はこの想いをどうしても陽子さんにわかってほしかった。

「私、刺されたとき先生に私を刺した陽子さんの気持ちわかるって言った・・陽子さんが先生のこと好きって知ったからだよ!?私と同じ気持ち持ってるからわかるって言ったの・・」

私は陽子さんの目をじっと見た。

そんな私に耐えられなくなったのか陽子さんは私から目を背けた。

そして静かに口を開き始めて・・私たち・・先生に向かって語りだした。


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