愛いっぱいCHU
「よし、いい子だ」

そう言うとその人は自分の着ていた上着を私にかけてくれた。

「あ・・の、これ・・」

「そのまんまじゃ帰れないだろ」

「は・・はい」

私はその場をたって急いで自分の家の方向へ走っていった。

あの助けてくれた人がいなかったら私一体どうなってたんだろう・・。

怖かった・・信じられなかった・・。

自分が・・まさか自分がこんな目に遭うなんて・・。

「・・っ」

私は走りながら涙を流し、たえられない思いをぶちまけるように大声で泣いた。

「・・どう・・して?」

・・直哉・・直哉・・直哉ーーっ

私・・直哉だけの私なのに・・未遂で終わったとはいえ・・こんなこと・・直哉にはいえない・・。

知られたら・・私・・もう

「直・・哉」

悪夢のような現実・・。

夜の闇は果てしなく・・・長い・・。











翌日・・親にもいえない昨夜のことを一番に親友である沙都に報告した。

うつろな目で話す私を優しく抱きしめてくれた。

その腕からは深い暖かささえも感じた。

沙都の存在を私は心から感謝している。

人の心の傷や痛み・・それがわかる沙都は私の話を聞きながら涙を浮かべてくれていた。

沙都は私が何もかもを話し終わった後・・そっとその場を離れた・・。

・・それが沙都の優しさ・・精一杯の愛情・・。

私の気持ち・・一番に理解してくれている・・。

「あすか」

沙都が去った後、一人でグランドを眺めていた私に誰かが声をかけた。
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