愛いっぱいCHU
そう、直哉は登校中私に会うと必ずこういう挨拶をする。

つい昨日まではこの挨拶がとても心地よかったのに・・。

今じゃ・・後ろめたさを感じる・・。

「ん?どした?あすか」

「え!?」

し、信じらんない・・直哉がこんな優しい言葉・・。

「な・・なんでもないよっ。ねむいだけっ」

ほかに言葉が出てこなかった。

優しい言葉に酔いしれる間もなく罪悪感でいっぱいになる。

「あんま夜更かしばっかしてんじゃねーぞー」

直哉・・とても温かい・・。

「ホラ、はやくいこーぜー、遅刻すんぞ」

私はそんな直哉の後を追った。







1時間目の授業はまるで頭に入らなかった。

授業内容なんてきいてられるワケがない。

「あすかー」

教室の前の廊下で沙都が叫ぶ。

「なにー?」

沙都は私の方に歩み寄ってきた。

「どしたの?沙都」

「アンタのカレシ、早退していったよ。何考えてんだろ・・まだ1時間目終わったばかりよ?」

「え・・・」

早退・・直哉が・・早退・・?

「ぐ・・あいでも悪いのかな・・」

とりあえず沙都にきいてみた。

「まっさか、あの男が?」

それは私も同意見だ。

直哉が具合悪いだなんて・・誰がきいても信じない・・。

「ま、たまにはいいんじゃないの?アイツに知られることのない日ってのもさ」

直哉に・・知られることのない・・・。

「・・・」

そ・・そうだっ!
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