センセイと一緒 ~feel.Black~
言い、柊史は鈴菜の肩を抱いたまま水槽の前に歩み寄った。
水槽の中には、銀色の体に黒い縦筋が入った魚が何匹か泳いでいる。
「こいつは自分の口から水鉄砲を吹いて、エサになる虫を落として食べる」
「へぇ……」
「口の機能だけで言ったら、ある意味ヒトより高度かもしれねぇな? ……まぁヒトに、そんな機能は必要ねぇだろうが……」
柊史の説明に、鈴菜はふむふむと頷いた。
柊史は魚にも詳しいらしい。
水槽の脇の説明を読むまでもなく、柊史が横で説明してくれる。
水族館と言えばデートの定番コースだが、柊史と一緒だとまるで社会科見学のようだ。
……でも、柊史らしくていいかもしれない。
昔、河原で一緒に遊んだ時も、柊史は川辺の草花や生き物について詳しく説明してくれた。
ひぐらしの鳴く夕暮れの川辺で、夕陽に輝いていたあの黒い瞳。
ずっと昔から、鈴菜の心に焼き付いていた、あの瞳。