センセイと一緒 ~feel.Black~




「……それは、違うな」

「柊史……」

「そういう例えで言うなら。……あいつは空気だ。澱んだ水の中で呼吸の仕方すら忘れてたオレに、あいつは呼吸の仕方を教えてくれた」

「……」

「呼吸することがヒトとして自然なことだと、あいつは気付かせてくれた。……生きるということの本質を、あいつは教えてくれた」


生物教師らしい柊史の例えに、弘子は息を飲んだ。

生きるということの本質。

これまで柊史はそんな言葉を口にしたことはない。

柊史は弘子を見据え、続けて言った。


「弘子。……前にも言ったが、もう一度言っておく。オレ達の関係はもう終わった」

「柊史っ……」

「他の女とももう、とっくに手を切ってある。……オレにはもう、あいつしかいない」


柊史ははっきりと言った。

……いつになく強い、柊史の言葉。




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