センセイと一緒 ~feel.Black~



弘子が連れてきたのは、駅前のエステートビルの地下にある薄暗いバーだった。

内装は黒やグレーを基調にした落ち着いた感じで、所々にお洒落なオブジェが置かれている。

大人の隠れ家的なバー。

まさにそんな印象だ。

もちろん鈴菜はこういった場所に来たことはない。

足をすくませる鈴菜を、弘子は無理やり店内へと引っ張っていく。


「ここは私と柊史の行きつけのバーよ」

「……え?」

「いつも、あのカウンターの奥の席で、二人で飲んでるわ」


弘子は目を細め、カウンターを指差した。

……いつも、あそこで……

鈴菜は胸がズキッと痛むのを感じた。

そんな鈴菜をちらりと見、弘子はバーにいた男に声をかけた。


「ねぇ、奥の個室は空いてる?」

「ええ、本日は一日、空いてますよ」

「そう、ありがとう」


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