センセイと一緒 ~feel.Black~
くすくすと笑いながら弘子は言う。
……その余裕に満ちた表情の中によぎる、優越感。
子供のあなたは知らないわよね?……と言外に告げているその表情。
鈴菜は胸に黒いものが広がるのを感じた。
そんな鈴菜に、弘子は続けて言う。
「柊史は酒はウィスキーしか飲まないわ。そして煙草はしない。両方やってるように見えるけど、そうじゃないのよね……」
「……」
「柊史の香水は、リサ・アシュリイのホワイトムスクよ。昔からずっとあの香りだわ。だからあの香りがすると、柊史が近くにいるってすぐにわかるの」
やがてドアが開き、ウェイターがウィスキーのグラスとオレンジジュースが載ったお盆を持って現れた。
弘子は立ち上がり、ドアのところでウェイターからそれを受け取った。
カツカツとヒールの音を響かせてソファーに戻り、とん、とテーブルに置く。
鈴菜は俯いたまま、弘子の言葉を脳裏で反芻していた。
……鈴菜の知らない、柊史の過去。