センセイと一緒 ~feel.Black~
聞けば聞くほど、鈴菜の胸の中に黒いものが広がっていく。
鈴菜は昔の柊史しか知らない。
けれど弘子は、今の柊史を知っているのだ。
――――嫉妬。
重ねた時間の差。
経験の差。
それはどうあがいても勝つことはできない。
息を飲む鈴菜に弘子はオレンジジュースを差し出した。
「さ、飲みなさいな。ここのオレンジジュースはイタリアから仕入れている本格的なものよ?」
「……」
「柊史はたまに、このオレンジジュースを使ったスクリュードライバーを頼んでいるわ。この酸味が気に入ってるみたいよ?」
弘子の言葉に、鈴菜は吸い寄せられるようにオレンジジュースに手を伸ばした。
……柊史が好きなもの……
柊史のことを少しでも知りたい。
鈴菜はグラスを傾け、オレンジジュースを少し飲んだ。
それを見、弘子は唇を歪めて笑う。