センセイと一緒 ~feel.Black~



聞けば聞くほど、鈴菜の胸の中に黒いものが広がっていく。

鈴菜は昔の柊史しか知らない。

けれど弘子は、今の柊史を知っているのだ。


――――嫉妬。


重ねた時間の差。

経験の差。

それはどうあがいても勝つことはできない。

息を飲む鈴菜に弘子はオレンジジュースを差し出した。


「さ、飲みなさいな。ここのオレンジジュースはイタリアから仕入れている本格的なものよ?」

「……」

「柊史はたまに、このオレンジジュースを使ったスクリュードライバーを頼んでいるわ。この酸味が気に入ってるみたいよ?」


弘子の言葉に、鈴菜は吸い寄せられるようにオレンジジュースに手を伸ばした。

……柊史が好きなもの……

柊史のことを少しでも知りたい。

鈴菜はグラスを傾け、オレンジジュースを少し飲んだ。

それを見、弘子は唇を歪めて笑う。

< 167 / 225 >

この作品をシェア

pagetop