センセイと一緒 ~feel.Black~




「どう? 美味しいでしょう?」

「……」

「柊史は好き嫌いはほとんどないし、美味しいお店をいろいろ知ってるわ。知ってる? 駅前にあるトラットリア・リベルタ。あの店のパスタ、本当に絶品なのよ」


言いながら弘子もグラスを傾ける。

……ふわりと香る、豊潤なウィスキーの香り。

大人の香り。

鈴菜はぐっと唇を噛みしめた。


「……そしてここで飲んだ後、二人でホテルに行くの。体だけの関係ならホテルで待ち合わせてもいいのに、柊史はそうしなかったわ」

「……」

「そういうところが、女を惹きつけるのかもしれないわね?」


弘子はグラスを傾けながら淡々と呟くように言う。

……聞きたくない。

鈴菜は俯き、膝の上で手を拳に握りしめた。

もうこれ以上、聞きたくない……。


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