センセイと一緒 ~feel.Black~




弘子の口から語られたのは、この間のクリスマスのデートとは全く違う大人のデートだった。

……多分あの日、柊史は鈴菜に合わせてくれたのだろう。

きっと弘子とは水族館になど行かないに違いない。

もちろん鈴菜は未成年なので飲み屋やバーに行くことはできない。

けれど弘子とは何度も行っていたのだ。

――――大人の付き合い。

想像するだけで胸が引き裂かれそうに痛む。

鈴菜は目を伏せ、ぐっと手を握りしめた。


「柊史はいつも、私を丁寧に愛してくれたわ。私の体をゆっくりと開いて、優しく、じっくりと……」

「……っ!」

「あなたが柊史と関係を持ったかどうかは知らないわ。けれど一度愛されれば、わかると思うわよ? 私が言ったことがね?」


弘子は目を細め、鈴菜を見た。

……その目に浮かぶ、優越感。

鈴菜は胸の中の黒いものが、沸騰するような気がした。

――――激しい嫉妬。

これまでに感じたことのないその感情に鈴菜は飲み込まれていった。


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