センセイと一緒 ~feel.Black~
30分後。
柊史は海岸線沿いの小さな店の前でバイクを止めた。
こじんまりとした佇まいだが、どことなくお洒落な雰囲気で、店の前の草木やアプローチも綺麗に整備されている。
看板には『ミラコスタ・キュイジーヌ』とある。
どうやらイタリア料理のレストラン兼宿泊施設らしい。
鈴菜は後部座席から下り、ヘルメットを取った。
髪を振り、解放感にふぅと息をつく。
バイク用のヘルメットというのは思ったよりきついものだと、鈴菜は初めて知った。
「柊ちゃん、バイク乗るんだね。知らなかった」
「車より、こっちの方がオレの性には合ってるからな。ちなみにこいつはグラファイトブラックのインデグラだ。排気量は750cc」
柊史の説明に、鈴菜はへえと眉を上げた。
……よくわからないが、確か400より大きいクラスだと大型免許が要る、と依然和泉から聞いた気がする。
「……てことは柊ちゃん、大型二輪の免許持ってるの?」
「あぁ。大学の時に取った。自動車の普通免許を持っていれば、2週間もあれば取れる」
「へー……」