センセイと一緒 ~feel.Black~




鈴菜は昔から柊史の心の中である特定の位置にいる。

それは懐かしい記憶と、温かい想い出と、優しさに満ちた輝く場所。

聖域と言ってもいいかもしれない。

そしてそこは今、切ない想いに溢れている。


「……」


鈴菜を大学に送り出すのは自分の職務だ。

けれどその先の鈴菜の未来を、自分の未来と重ねたい。

鈴菜を永遠に自分のものにしたい。

そう思う自分がいる。


全ては、鈴菜が高校を出てからだ。

高校を出たら……


「鈴……」


柊史は呟き、コーヒーを一口飲んだ。

永遠、永久……。


これまで考えたこともない言葉が、鈴菜といると何度も頭をよぎる。

まだ早い、けれど……

いつか、鈴菜に伝えたい。

柊史はコーヒーを置き、机の上に置いてあった学会誌を手に取った。


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