センセイと一緒 ~feel.Black~
2.短い夢
夕方。
中庭で鈴菜は和泉を待っていた。
秋の爽やかな風が芝生の上を吹き抜けていく。
膝を抱え、ぼーっと見上げていた鈴菜の後ろからざっと靴の音がした。
「……おや、森下さん?」
振り返ると。
尚哉が本を片手に、こちらの方へと歩いてくるのが見えた。
鈴菜は慌てて立ち上がった。
「こんな所で……。誰かと待ち合わせですか?」
「あ、はい、和泉と……」
と言いかけた鈴菜に。
尚哉は目を細め、微笑した。
……穏やかで優しい笑顔。
体育祭の時に見た、あの鋭い瞳とはまるで違うその笑顔。