センセイと一緒 ~feel.Black~
尚哉は一歩近寄り、黙り込んだ鈴菜の前に立った。
……切なげな、けれど優しい瞳。
鈴菜は吸い寄せられるように尚哉を見上げていた。
「森下さん。……僕は森下さんにこの高校で会えて、良かったと思っています」
「……?」
「短い間ですが、夢を見ることができた。……ありがとう、森下さん」
尚哉は目を細めて言う。
鈴菜は首を傾げた。
なぜ尚哉が自分に礼を言うのかよくわからない。
夢……って……。
怪訝そうな顔をする鈴菜に、尚哉は続けて言う。
「幸せになってくださいね、森下さん」
「……白崎先生……」
「あなたがいつも笑顔でいることを、……それだけを、僕は願っています」
尚哉は言い、もう一度鈴菜に笑いかけて踵を返した。
……その優しく、少し寂しげな瞳。
鈴菜はその背を呆然と見つめていた。
そんな鈴菜の姿を。
柊史が生物室の窓から腕を組んで見つめていたことを、鈴菜は知らなかった。