センセイと一緒 ~feel.White~
16:50。
鈴菜は能舞台の脇に設置された観覧スペースの入り口で、立っていた係員に声をかけた。
「あぁ、森下さんですね? 尚哉より話は伺っております。さ、こちらへ」
係員は尚哉と同じく20代半ばの男性で、短く整えられた黒髪にスタイリッシュな眼鏡を掛けている。
男性は鈴菜を観覧席の前の方に案内しながら、口を開いた。
「ぼくは岩瀬といいまして、尚哉の大学の同期です。毎年こうして、桜羽能の会場運営に参加しています」
「そうなんですか……」
「基本的には全てボランティアですからね。ぼくは大学に入ってから始めたんですけど、あいつはもうずっと昔から、舞台に立っていますよ」
「……」
鈴菜はちらりと能舞台を見た。
舞台は6m四方ほどの広さで、檜だろうか、板張りになっている。
――――白崎先生は、あの舞台でずっと……。
無言で舞台を眺める鈴菜に、岩瀬は少し笑った。