センセイと一緒 ~feel.White~
そして、6月の末。
いつものように笛を聞きに来た鈴菜に、少年は言った。
「おれ、今度の桜羽能で笛をやることになったよ」
「……桜羽能?」
「ほら、桜羽大祭の夜に神社でやるやつだよ。演目は『井筒』」
「いづつ……?」
よくわからない。
と首を傾げる鈴菜の前で、少年は笛を構えた。
しばしの沈黙の後、流れるような笛の音が境内に響いていく。
「……!」
これまでに聞いたことのない、綺麗な、そしてどこか哀しげな音色に鈴菜は釘付けになった。
少年の笛は鈴菜の心に染みわたるように響き、鈴菜は身動き一つできないままその音色を聴いていた。
やがて少年は笛を止め、顔を上げた。
「鈴菜。……お前、桜羽大祭って行ったことある?」
「うん、大きな神社のお祭りだよね? 毎年、お父さんとお母さんと行ってるよ?」