センセイと一緒 ~feel.White~
しかし、7月に入った頃。
鈴菜の父親に転勤の話が持ち上がり、一家は引越しの準備を始めた。
鈴菜も引越しに向けて準備をすることになり、なかなか神社に行けなくなってしまった。
それでも時間を見つけては神社に行くと……
いつものように、少年が井戸のところで笛を吹いていた。
「ごめんね、ナオくん。なかなか来れなくて」
と言った鈴菜を。
少年はふんと笑い、横目で見た。
「おれは来てなんて一言も言ってないよ? ……まぁ鈴菜が来たいなら、来ればいいんじゃないの?」
「……」
その言葉に、鈴菜は心が痛むのを感じた。
……自分はこんなに会いたいと思っているのに。
この少年は自分に会いたいとは思ってないのだ……。
幼心にその言葉はひどく辛く感じた。
あと一か月で自分はこの町を離れてしまう。
本当はもっと会いたい。
けれど……子供の自分にはどうしようもない。
……そして、あの日が訪れた。