センセイと一緒 ~feel.White~
能舞台を出た後。
二人は拝殿の横に設置されてある休憩用の椅子に座り、参道の賑わいを眺めていた。
本殿と拝殿は少し高台にあり、ここからだと参道や手水舎、社務所の様子が見える。
露店の橙色の灯りが夜闇の中にぼんやりと浮かんでいる。
夜風に乗って、風鈴の音がどこからともなく聞こえてくる。
「……君を傷つけたことを、おれはずっと後悔してた」
参道の灯りを眺めながら、尚哉が静かに口を開く。
鈴菜もその隣に座り、参道の方をぼんやりと眺めていた。
……二人の間に漂う、どこか懐かしい空気。
あの頃とは少し違う、けれど……
どこか優しい、落ち着く空気。
それは尚哉の話し方が、昔の記憶と同じものだからかもしれない。
――――その方が今は、自然に思える。
「今度会ったら謝ろうって、ずっと思ってた。けれどあれから君は、全く来なくて……」
「……引っ越したんです、あの翌日に……」
「おれがそれを知ったのは、君が転入した時だったよ。君の指導要録を見て初めて知った」