メイプル*コイスル!
1*ハジマリ
変人美少女。
高校生になって一ヶ月がたった。
家から一番近い、偏差値も平均より少し上の適当な高校に進学した俺は、可も不可も無く普通の日々を送っている。
部活に入る訳でも無く、かと言って勉学にも勤しむ訳でも無い。
本当に平凡で平和な日々だ。
そんな俺は今、部活モードに変わった校舎を出て駐輪場へと歩いている。
今日から自転車通学が解禁されたので通学が楽だ。
受験合格祝いとして買ってもらった、緑色の自転車に小さなカギを差し込む。
新品なのでカギの解除も滑らかだ。
前に使っていた自転車はサビだらけで、カギを解除するにも一苦労だった。
少しご機嫌でスタンドを蹴った、その時だった。
ガシャン。
ガタガタガタガタ……。
何かが次々に倒れる音。
音の方を見ると、反対側の駐輪場になぎ倒しになった自転車と呆然と立ち尽くす女子がいた。
あー……、やっちゃったんだな。
きっと自分の自転車を倒して、他の自転車へとどんどんドミノ倒し状態になったのだろう。
誰もいないようだし、さすがに放って行くわけにはいかないか。
そう思った俺は反対側の駐輪場へと駆け寄った。