メイプル*コイスル!
フラフラと教室を出て行く愛希を見送る。
クソまずい弁当もようやく空になり、俺は暇つぶしにスマホの育成ゲームを弄った。
農場を成長させていくゲームは、俺の最近のブームだ。
こんな農場でのんびりとした生活をしてみたいとよく思う。
癒されながら農作物の世話していると、俺はビクリと肩を震わせた。
スマホが突然着信音を奏でたのだ。
着信相手は愛希だった。
「……もしもし?」
『おい俊哉、早く学食来いよ!お前の言ってた妖精ちゃんらしき子がいる!』
妖精ちゃんらしき……って。
あの子いつの間に妖精ちゃんって名前になったのかよ。
そんな事はどうだっていい。
俺は学食にダッシュするのみ!!
まだ新しいスマホを丁寧に制服のポケットにしまってから、俺はむさ苦しい6組を飛び出した。
***
昼休みも終わりに近づいたせいか、学食の人は疎らだ。
愛希を見つけ出すのは容易なことだった。
「おーい俊哉!こっちこっちー」
あれ?
愛希、弁当食べてたよな。
愛希の座っている座席に、空のどんぶりが三つと、パスタなどが盛られる空の平たい皿が五枚。
デザート用の小皿に至っては十枚を越している。
あいつはそんなに大食漢じゃないはず……。
「ちょっと俊哉助けろよ。この子見ろ」
愛希が肩を竦めて親指で自分の隣に座っている女子を指す。
ハムスターのように口の中に詰められるだけ何かを詰めて、顔を上げる女子。
「「あ……!」」
間違いない、彼女は昨日の美少女だ。
ケーキを食べていたのだろう、顔のいたるところにクリームをくっつけている。
『妖精ちゃん』は慌てて口の周りを拭うと、ガタンと立ち上がった。