メイプル*コイスル!

可愛らしい袋にちゃっかり入っていたのは、それはそれは真っ黒に焦げたクッキーだった。





ヒャッハァー!

ボクチン黒焦げクッキー大好きー!



……なんて奴は世界中どこを探してもいないだろう。

いや、仮にいたとしても少なくとも俺は焦げたクッキーは好きじゃない。


ど、どうしよう……。




食べるか、食べまいか。

迷っていると、ハッとした顔をして上園さんが言った。




「あっ、まっ黒焦げ……!昨日は緊張してて、気付かなくって!食べないで松本くん、作り直すから!」

「あ、いや、その」




上園さんはションボリとした顔をして、うつむく。

心なしか目が潤んでいるようにも見えた。



……ここで突き返すのもなぁ。

よし。





「俺、腹減ってたんだ。遠慮なくいただくわ」

「「あっ……」」




愛希と上園さんの心配そうな顔を無視して、俺は目を閉じてクッキーを口に放り込んだ。


……苦い!

苦すぎる……。



なんとか無理やりクッキーを喉に押し込んで、俺は大きく息を吐いた。






「松本くん!……お茶買ってくるね?」




パタパタと上園さんが去った教室で、愛希が拍手した。




「やるねぇ俊哉さんよぉ……男前!」

「あんな顔されちゃ断れねーだろ……あー、苦い」




不味い物ってどうしてこんなに風味が残るのだろうか。

苦味が舌をまとわりついて離れない。




「不味い物作って来たとは言え、飲み物買いに行くなんて上園ちゃんも気が利く子だよな!」





確かにそうだな……。

ちょっと変わってるけど、やっぱりしっかりしていると思う。
< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop