メイプル*コイスル!
可愛らしい袋にちゃっかり入っていたのは、それはそれは真っ黒に焦げたクッキーだった。
ヒャッハァー!
ボクチン黒焦げクッキー大好きー!
……なんて奴は世界中どこを探してもいないだろう。
いや、仮にいたとしても少なくとも俺は焦げたクッキーは好きじゃない。
ど、どうしよう……。
食べるか、食べまいか。
迷っていると、ハッとした顔をして上園さんが言った。
「あっ、まっ黒焦げ……!昨日は緊張してて、気付かなくって!食べないで松本くん、作り直すから!」
「あ、いや、その」
上園さんはションボリとした顔をして、うつむく。
心なしか目が潤んでいるようにも見えた。
……ここで突き返すのもなぁ。
よし。
「俺、腹減ってたんだ。遠慮なくいただくわ」
「「あっ……」」
愛希と上園さんの心配そうな顔を無視して、俺は目を閉じてクッキーを口に放り込んだ。
……苦い!
苦すぎる……。
なんとか無理やりクッキーを喉に押し込んで、俺は大きく息を吐いた。
「松本くん!……お茶買ってくるね?」
パタパタと上園さんが去った教室で、愛希が拍手した。
「やるねぇ俊哉さんよぉ……男前!」
「あんな顔されちゃ断れねーだろ……あー、苦い」
不味い物ってどうしてこんなに風味が残るのだろうか。
苦味が舌をまとわりついて離れない。
「不味い物作って来たとは言え、飲み物買いに行くなんて上園ちゃんも気が利く子だよな!」
確かにそうだな……。
ちょっと変わってるけど、やっぱりしっかりしていると思う。