メイプル*コイスル!
小さい体で一生懸命ムニムニとくっついてくる上園……かえでちゃん。
うぅ……これはキツイ。
「ちょ、とりあえず離れろ!」
べりっとかえでちゃんを引き剥がす。
かえでちゃんはなんでー?と唇を尖らせた。
この子……恐ろしいな。
「やだぁー。もう少しだけっ」
かえでちゃんがまた抱きついてくる。
なんかイライラしてきたぞ……。
「人数分買ってきたぞ…………あ」
げっ。
飲み物を買いに行った愛希が帰ってきた。
俺はかえでちゃんに抱きしめられたままだ。
愛希は一瞬目を見開いたが、すぐににやりと笑って言った。
「じゃ、俺帰るわ」
「ちょ待てよ愛希!」
俺は再びかえでちゃんを引き剥がして愛希をとっ捕まえた。
「俺なんでこんなことになってんだ?」
「知らねーよ。しらばっくれるなって」
いや、これ本心……。
俺が愛希に目で助けを訴えていると、後ろでかえでちゃんがため息をついた。
「ダメだね俊ちゃん、あのままイチャイチャしてそのチャラ男を追い出してれば、エロゲ的展開になったかもしれないのに」
「……は?」
「でも今日はもういいや。萎えちゃったー」
何を言っているんだろうか、この子は。
「じゃ帰るね、俊ちゃん。失礼しまスギッチ」
いや、だからなんで秋田県のマスコットキャラクターを……。
俺と愛希はしばらく呆然としたままだった。
「俺、女の子にあんなにストレートにチャラ男って言われたの初めて……」
いや、そこかよ。
俺、ひょっとしてとんでもない奴に惚れられた?
……のちに俺は、そんな程度ではないと言うことを思い知ることとなる。