魔王と女神のシンフォニア
「ルビィ!」
心配そうにアリスが叫ぶ。
シフォンは構えているがまだでない。

獣は正気を失っている感じだった。
「ルビィ、もう一度あいつの心理に入り込むんだ!」
僕は無我夢中に叫ぶ。

それに気付いたのか体制を立て直し、また祈るような体制をとる。しかし、

「だっ 駄目!入れない!何か何かこの子おかしい!」
心理に入れない?誰かが操っているのかと疑問が起こるが周りにそんな気配はない。

そんなことを考えていると魔獣が鎖を引きちぎりルビィにゆっくりと近づいてきていた。

「あっ・・・あぁ」
ルビィは体が動かないといった様子だ。

「先生!ルビィはもう限界です!速く・・速く助けてあげて下さい。」
アリスが泣きそうな顔でシフォンに助けを求める。しかし、シフォンはまだ動かない。代わりに冷たいような言葉をいつもの笑顔で全員に投げかける。

「皆さん~ こういう場合、つまり、危機的状況に陥った場合に能力が著しく強化される場合が過去にもありました~。なので私たち指導員は、本当に危機的な場合、つまり、本当に死ぬんではないかという寸前までは助けませ~ん。もちろん、生徒の誰かが助けに行ってもその人は、授業妨害として罰則がつきますよ~」
「そっ そんな」
アリスはペタンと椅子に座り込む。
周りの生徒も罰則がつくということを聞いた瞬間少し床に目を移していた。

僕は思い出したようにルビィの様子をみる。
魔獣はもうルビィの手の届く所にいて大きな手を大きく振りかざしていた。

シフォンはまだ動かない。ルビィも恐怖からか全くガードの体制もとっていない。小さな絞りあげるような声でルビィは、
「だっ 誰か・・・」
と呟く。

皆は息を飲んで見守るだけ。アリスはもう泣いてしまいそうな様子で、自分ではどうしようもないことがわかっているが気を緩めると立ち上がり助けに行きそうな様子で席に座り様子をみている。


・・・こんなの・・こんなのおかしい。僕は体に力を入れる。

同時に魔獣の拳も降りおろされる。

「いやぁぁぁぁぁ!」
アリスの悲鳴が教室内にこだまする。


ドスッ!

重く鈍い音が教室内に響いた。
< 69 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop