誘惑のクラン(血族)
「そんな質問は愚問です。私はお兄様に会いたくて来たのですから」


香織はひとりではなかった。


彼女の後ろに保護者のような男が立っている。


香織は微かに後ろを向き頷くと、男はその場から消えた。


香織は足音も立てずにそろりと優真に歩み寄り、抱きついた。


香織の頬が優真の胸にあてられる。


「それほど離れているわけではないだろう?」


「ほんの数日でも、お兄様と離れて過ごすのは苦痛です」


ぴったり寄り添ったまま香織は顔を上げて、シャープなラインの優真の顔を仰ぎ見る。


「人間の匂い……どなたですか? お兄様」


優真の身体から人間の匂いがし、香織は期待を込めた笑顔になる。


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