誘惑のクラン(血族)
******


優真はガラスケースの本棚の前で、本をパラパラとめくっていると、微かなノックの音が聞こえた。


「入れ」


優真にはドアの向こうにいる人物が誰かわかっている。


優真の返事の後に、静かにドアが開き八条が姿を見せた。


いつもは無表情な八条は緊張した面持ちで優真を見た。


彼を見る優真のキレイな弧を描く片方の眉が上がる。


「お前が情報を流していたのか」


「申し訳ありません。長の命令で仕方なく……」


八条は何百年と優真に仕えてきた男だ。


裏切らず信用のある男がなぜ?


< 109 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop