誘惑のクラン(血族)
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「美菜! ちょっと待って! 無断侵入だよ?」


高い鉄柵の横の通用口を開けて中へ入っていく美菜の腕を璃子は慌てて掴んだ。


「あの家に人がいるわ。このままだと車の中で一晩夜明かししなくちゃいけなくなるでしょ?」


その時、足元の草が揺れた。


ガサッ!


「きゃっ!」


すぐ近くで葉のこすれる音に璃子は縮み上がった。


「ほら、璃子。行ってみよう」


人一倍、暗闇が嫌いな璃子は、美菜の腕をぎゅっと掴みながら歩いた。



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