誘惑のクラン(血族)
ホールの床に足がつく前に、リビングでも娯楽室でもないドアが少し開かれ、明かりが漏れていた。


まだ誰か起きている?


まだ5メートルほど離れているのに、部屋の中の声が璃子の耳に聞こえてきた。


「お兄様、早く抱いてください」


その甘い声はすぐに誰の者かわかった。


香織さん……香織さんがお兄様と言う人はひとりしかいない……。


常識では考えられない香織の言葉にあ然となる。


抱いてくださいって……単なる抱きしめるというには違うような……。


璃子の足はいつの間にか少し開かれたドアの前まで来ていた。


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